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文化人結んだ伝説のバー「火の子」 遺品写真6000枚

多くの文化人が集った東京・西新宿のバー「火の子」(2002年閉店)。2年前に亡くなった女性店主の遺品から店内の様子を収めた6千枚の写真が見つかった。写真は1980~90年代に各分野を代表した顔ぶれがグラスを片手に語らう姿を生き生きと記録している。

右から名古屋外国語大学学長の亀山郁夫さん、文化人類学者の山口昌男さん、演劇評論家の田之倉稔さん、人類学者の中沢新一さん(1990年前後撮影)

「火の子」は飲食店、風俗店が立ち並ぶ地域の雑居ビル3階にあった。2016年に83歳で亡くなった内城育子さんが、73年に開業。カウンターとテーブル席が4つの小さな店だった。

作家の埴谷雄高さん(左)(1980年代前半撮影)

内城さんが他店で修業中に知り合った常連客を通じ、だんだんと文化人が集まるようになった。ノーベル賞作家の大江健三郎さん、劇作家の井上ひさしさん、文化人類学者の山口昌男さん……。店の雰囲気と内城さんの人柄にひかれ、そうそうたる顔ぶれが足しげく店に通った。

劇作家の井上ひさしさん(1980年代半ばごろ撮影)

詩人の谷川俊太郎さんもそんな常連客の一人。作曲家の武満徹さんとよく飲みに来たという。サラリーマンから作家に転じ、「赤目四十八瀧心中未遂」「鹽壺の匙(しおつぼのさじ)」などの小説を著した車谷長吉さんはデビュー前から週に何度も店を訪れ、店内で交わされる会話に耳を傾けた。内城さんは生前、「うちの店から巣立っていった」とうれしそうに話していたという。

文化人類学者の山口昌男さん(左)と評論家の川本三郎さん(1980年代前半撮影)

内城さんの死後、遺品を整理した際、30冊のアルバムが見つかった。主に80~90年代の店内の様子を収めた6千枚の写真は、時代を彩った文化人たちが酒を飲みながら交流する貴重な姿を捉えている。

詩人の谷川俊太郎さん(左)と作曲家の武満徹さん(中)(1980年代前半撮影)

元従業員の石井恭子さん(56)は「誰もがくつろげる店であると同時に、作家が編集者を連れて来店し新しい仕事が生まれる場所でもあった」と振り返る。武満徹さんが出版する本の装丁を常連の建築家に依頼するなど、分野を横断した仕事の交流もあったという。

元従業員で、中央大講師の尾形弘紀さん(45)は「著名な人もこの店では気を抜いていた。誰でも分け隔てなく接する内城さんの人柄のおかげだろう」と振り返る。

石井さんや尾形さんら有志はアルバムのなかから600枚の写真を選んで写真展を企画した。石井さんは「文化的資料としても貴重。普段は見られない、リラックスした素の表情が見られる展示を楽しんでほしい」としている。

写真展「火の子の宇宙」は19~24日の正午~午後7時(最終日は午後5時まで)、東京都中央区銀座1の9の8のギャラリー「巷房2」で開かれる。

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