2018年7月22日(日)

司法取引、6月1日に導入 経済犯罪を幅広く対象に

2018/3/16 8:42
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 政府は16日の閣議で、他人の犯罪を明らかにすれば見返りに罪が軽くなる「司法取引」を導入する改正刑事訴訟法の施行日を6月1日にする政令を決めた。政令は対象犯罪として、改正刑訴法で示した贈収賄や薬物・銃器犯罪などに加え、新たに独占禁止法違反などの経済犯罪を幅広く定めた。企業を含む組織的な犯罪の捜査で新たな武器になるが、虚偽の供述で冤罪(えんざい)を生む懸念も指摘される。

 司法取引は容疑者や被告が供述や証拠の提供によって共犯者らの犯罪を明かした場合に、見返りとして検察官が起訴を見送ったり、求刑を軽くしたりする仕組み。合意には弁護人の同意が必要で、取引過程も記録・保管する。個人だけでなく、企業などの法人も司法取引の当事者になれる。

 対象は贈収賄や詐欺などの経済犯罪と、覚せい剤取締法違反など銃器・薬物犯罪だ。2016年に成立した改正刑訴法では一部の経済犯罪を除いて、対象犯罪を政令で定めるとしており、その対象を今回の政令で決めた。

 独占禁止法や営業秘密侵害の罪などを定める不正競争防止法、著作権法など知的財産関連法制、銀行法や貸金業法など特定業種の営業に関する法律への違反が含まれた。

 企業や暴力団などによる犯罪が念頭にある。例えば特殊詐欺の末端の実行犯から、首謀者の関与を裏付ける端緒となる重要供述を得るといったケースだ。贈収賄事件など客観的な証拠が得にくい場合に、自白に過度に頼らない立証の手段として期待される。捜査への協力で減刑にすることへの被害者らの感情に配慮し、殺人や性犯罪などは司法取引の対象外だ。

 欧米では司法取引がすでに導入され「自分の犯罪」をすすんで認めて捜査協力する司法取引も行われている。日本では「他人の犯罪」について明かす場合に限った。

 ただ、罪を逃れるための嘘の供述によって冤罪を生む恐れがあるとの懸念は根強い。虚偽供述に懲役5年以下の罰則を設けるなどしたが、捜査当局には裏付け捜査を徹底する姿勢が求められる。

 企業不祥事に詳しい専門家からは企業の対応の難しさを招くとの指摘もある。不祥事が発生した企業は社内調査に踏み切ることが多いが、元検事の早川真崇弁護士は「司法取引の材料を温存したいと考える従業員が社内調査に非協力的になる恐れがある」とみる。

 取引先が多く不正に巻き込まれるリスクが高い企業は予防策に力を入れる。丸紅は「コンプライアンス体制を整えた企業にとっては不都合はない。研修などで『不正は必ず当局に知らされる』と伝えるなど、従来以上の法令順守を呼び掛けている」(法務部)という。

 司法取引の導入は、厚生労働省の局長だった村木厚子さんが無罪になった郵便料金不正事件をきっかけとした刑事司法改革の柱のひとつだ。

 改正刑訴法などの関連法は16年5月に成立し、司法取引に関する規定は同年6月の公布から2年以内に施行することになっていた。取り調べの録音・録画(可視化)を義務付ける規定は来年6月までに施行する。通信傍受の対象拡大は、すでに16年12月に施行した。

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