米本社危機でも日本トイザらスは平常営業
米玩具販売大手のトイザラスが経営再建を断念し、米国にある全700店舗を閉鎖、もしくは売却する見通しとなった。ウォール・ストリート・ジャーナルなど米国の複数メディアが14日、報じた。アマゾン・ドット・コムなどのネット販売に押された同社は2017年9月に連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請。スポンサーを探していたが、見つからなかったもようだ。日本で営業する「トイザらス」に影響はないのだろうか。

日本の店舗は平常営業
日本トイザらス(川崎市)が運営する「トイザらス」「ベビーザらス」は約160店舗(併設店を含む)あり、17年9月の米国本社破綻以降も平常営業している。今回の報道について広報担当者は「米国本社に問い合わせているが、決まったことがなくコメントできない」とした上で、「米国と日本は別法人で、日本の店舗はこれまで通り営業していく」と話す。日本トイザらスとして金融機関とコミットメントラインを設定しており、資金繰りに問題が起きる可能性もないという。
ただ、資本関係をみると、今後も全く影響が出ないとは言い切れない。日本トイザらスの現在の株主は、ティーアールユー・ジャパン・ホールディングス・エルエルシー(LLC1)とティーアールユー・ジャパン・ホールディングス2・エルエルシー(LLC2)の2社だが、これらは香港に本社を置くトイザらス・アジア・リミテッドの傘下にある。そして米本社はアジア・リミテッドに85%出資している。営業は別だとしても、日本トイザらスの経営の支配権はやはり米本社にある。米本社が清算の過程で日本やアジアの事業を別企業に売却して、日本トイザらスの看板が変わるといった事態も考えられる。
アマゾン耐性は日本のほうが強い?
入り組んだ出資関係を理解するには、日本の玩具業界の歴史を振り返る必要がある。米トイザラスが茨城県阿見町に1号店を開いたのは1991年。新規出店を厳しく制限する大規模小売店舗法(大店法)を揺さぶりながらの日本進出で、米政府が市場開放を求めた日米構造協議の象徴として注目を集めた。
その後、日本トイザらスは巨大な売り場面積による大量・割安販売で店舗網を100店以上に広げ、2000年には店頭市場への株式上場を果たす。一方で、定価販売という商慣行を崩された日本の玩具メーカー、卸では2000年代半ばにかけて破綻と再編が相次いだ。
風向きが変わったのは2000年代後半だ。ヤマダ電機やビックカメラなどの家電量販店が玩具を取り扱うようになったほか、ネット通販が台頭し、日本トイザらスの販売が低迷し始める。米本社は日本事業を抜本的にてこ入れするため、2009年にTOB(公開買い付け)による日本トイザらスの非公開化を決断。同社は2010年にジャスダック上場廃止となった。
このTOBの際に、米本社が受け皿として設立した特別目的会社が前述のLLC1.2だ。そして17年春、中国、東南アジア地域の再編に合わせて、LLC1.2はアジア・リミテッドに組み込まれた。
ライバル量販とネット通販に押された日本トイザらスが立て直しのために選んだ戦略は、その都市、その町に合わせた店舗規模の最適化だ。ファミリー層が多いエリアでは引き続き大規模店で、それ以外では米国ではあまりみられない小規模店で勝負する。愛される地域店を目指して、ファミリー向けのイベントを定期的に開いている店舗もある。業績はV回復とまではいかないまでも、現状は維持しているもよう。店舗は閉鎖もあるが新規出店もあり、総数はここ数年160店前後を保っている。
小売業界では「米国で起きたことは数年後に日本でも起きる」とよくいわれるが、トイザラスに関していえば、結果として日本市場のほうがリストラで先行していた。アマゾンがあらゆる企業・産業をのみ込むことを意味する「アマゾンエフェクト」への耐性は、米本社より日本トイザらスのほうがあるのかもしれない。
(石塚史人)
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