2018年12月17日(月)

VW、先人頼みのV字回復 変わらぬ風土 不正影響なお

2018/3/13 23:00
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独フォルクスワーゲン(VW)の業績が急回復してきた。2017年は純利益がディーゼル車の排ガス不正発覚前の水準を上回り、販売台数も2年連続で世界一を達成。13日には電気自動車(EV)の生産体制も明らかにし、次世代車の競争へアクセルを踏む。不正発覚から2年あまり。V字回復に死角はないのか。

マティアス・ミュラー社長は排ガス不正からの回復に自信を示した(13日、ベルリン)

「史上最大の危機から戻ってきた。ジェットコースターのような旅だったが、今は非常に良い状態だ」。13日にベルリンで開いた記者会見で、マティアス・ミュラー社長は力を込めた。

17年の世界販売は16年比4%増の1074万台。純利益は2.2倍の113億5400万ユーロ(約1兆5千億円)に達し、不正発覚前の14年を5億ユーロ上回った。特筆すべきは7.4%に高まった売上高営業利益率(特殊要因を除く)だ。数年前までの3%前後と比べ、改善ぶりが際立つ。

ただ、足元の復活劇は不正発覚前に旧経営陣が取り入れた施策の効果が大きい。創業家出身で、経営に長く影響を与えたフェルディナント・ピエヒ元会長の側近らが進めた車両設計の共通化が収穫期に入ってきたのだ。高級車から大衆車までブランドやサイズを問わない共通化で、開発や部品調達、生産のコストを抑制。17年は全体の約4割、18年は5割まで共通化を進め、19年に効果はピークを迎えるという。

一方で、ピエヒ氏が嫌った多目的スポーツ車(SUV)を相次ぎ投入。SUVはVWが得意とする小型の大衆車に比べ価格が高く利幅も大きい。自ら発端となったディーゼル車への逆風も、ガソリン車の販売を伸ばし乗り切ってきた。結局、足元の好調は先人の遺産を生かしつつ、時代に合わない部分を否定する「いいとこ取り」とも言える戦略がはまった格好だ。

完全復活への道は平たんではない。組織の合理化では、高級二輪車のドゥカティ売却が従業員代表の反対で失敗に終わった。検討しているトラック部門の分離上場も、社内の説得が壁になる。

ピエヒ時代は「上意下達」「中央集権」といった風土が機動的な意思決定を阻み、不正の温床にもなった。従業員の意識を含めた企業風土の改革は「ゴールから最も遠い、とてつもなく大きな課題」とミュラー氏自身が認める。従業員への調査ではドイツ国内の工場に勤務する約5万人の3分の2が風土改革について「進歩がみられない」と答えたという。

不正の影響もまだくすぶっている。17年には車両の買い戻しなどに32億ユーロを費やした。18年も数十億ユーロ単位の費用が発生する見通しだ。今年に入ってからも、英国で集団訴訟の動きがあり、2月にはドイツ連邦行政裁判所がディーゼル車の市街地走行の禁止を認める判決を出した。

強まるディーゼルへの逆風で、今後、多額の改修費や賠償金が新たに発生する可能性もある。だがミュラー氏は販売への影響は限定的と強調。「ディーゼルエンジンの死は望まない」と述べ、ガソリンエンジンを含めた内燃機関への投資を継続する方針を示した。

18年からは電動化を中心に次世代技術にも5年で340億ユーロの投資を計画する。クルマは大変革期のまっただ中。その変化を上回るスピードで、VW自身が変わり続けられるか。好業績に浮かれている余裕はない。(ベルリン=深尾幸生)

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