2018年6月20日(水)

シリア内戦、政権軍の進攻続く 米は「再攻撃」示唆

2018/3/13 20:00
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 【イスタンブール=佐野彰洋、ニューヨーク=高橋里奈】シリア内戦をめぐり国連安全保障理事会が2月下旬に採択した停戦決議が機能不全に陥っている。アサド政権軍は決議発効後も首都ダマスカス近郊などの作戦を継続。米国は12日の安保理会合で、アサド政権への軍事行動も辞さない考えを表明した。内戦の開始から7年、域内外の諸国がそれぞれの思惑で介入を続け、偶発的な衝突が一段の戦闘激化につながる恐れもある。

 「国際社会が失敗し続けるなら、行動をとる場合もある」。ヘイリー米国連大使は12日の安保理会合で、アサド政権が使用したと疑われる化学兵器攻撃や市民の犠牲を阻止できなければ、アサド政権を再攻撃する考えを示唆した。米トランプ政権は2017年4月、シリアの化学兵器使用疑惑を受け、巡航ミサイルによる攻撃を実施した。

 シリア人権監視団(英国)によると、首都近郊の反体制派支配地域、東グータ地区で政権側の猛攻が始まった2月18日以降、同地区の民間人死者数は1100人を超えた。大半は政権軍やロシア軍による空爆が原因とみられる。

 国連安保理は24日にシリア全土で30日の停戦決議を採択したが、それ以降も戦闘は収まらない。政権側は地上部隊を進攻させ、同地区の約60%を制圧した。

 11年3月に始まったシリア内戦は当初、アサド政権とトルコや湾岸諸国が支援する反体制派が争う構図だった。ところが、過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭で、三つどもえの構図に変化して続いた。この間、30万人以上が死亡。人口約2千万人のうち半数以上が住む場所を追われ、500万人以上が難民として国外に逃れた。

 米軍が主導するIS掃討作戦の結果、17年にイラク北部モスルや首都と称したシリア北部ラッカなどの主要拠点は相次ぎ陥落。その「領土」はほぼ消滅した。

 「共通の敵」が姿を消したことで、ロシアやイランの支援を受けるアサド政権は反体制派の掃討と支配地域の奪還に本腰を入れる。停戦決議がテロ組織を対象外とすることを理由に軍事行動を正当化している。米国は12日、テロ組織を停戦の対象外としない新たな決議案を配布した。

 戦闘は、東グータ地区以外でも続く。政権側は北西部イドリブや中部ハマの郊外、南部ダルアーでも反体制派を攻撃。油田地帯の東部デリゾールでは米軍が支援するクルド人主体の「シリア民主軍」(SDF)と対峙する。

 隣国のトルコは1月、クルド人勢力を標的に北西部アフリンの越境軍事作戦を開始した。クルド人勢力の援軍要請に応じてアフリン入りしたアサド政権側民兵部隊にも空爆を実施するなど、緊張は高まっている。トルコ軍は13日、市街地を包囲したと発表した。

 シリア上空の限られた空域では、米ロやアサド政権、トルコ軍機が活動する。イランの影響力拡大を警戒するイスラエルも、イランやアサド政権の軍事施設への空爆を繰り返す。2月上旬にはアサド政権軍の地対空ミサイルが、イスラエル軍機を撃墜した。

 各国や民兵組織など代理勢力の思惑が複雑に絡み合うなか、偶発的な衝突が内戦を思わぬ方向へエスカレートさせかねないリスクが膨らむ。

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