/

侮るなかれ? 競馬ファンの「ケントク買い」

馬券を楽しむファンには様々なタイプの人がいます。レースの勝ちタイムや各レースの1ハロン(200メートル)ごとのラップタイムなど、記録を参考に冷静に検討する「データ派」。逆にデータに関係なく、好きな馬の子供をずっと追いかける、この馬に勝ってほしいと願う「応援派」。また、パドックなどで馬の状態を自分の目で見て確認しないと気がすまない「現場派」もいますし、ブラッドスポーツですから「血統派」もいます。

馬券を楽しむファンには様々なタイプの人がいる

競馬ファンの中には、馬の実力を問わない「ケントク買い」派も存在します。ケントク買いとは本来の予想とは関係のない要素を頼りに馬券を買うことです。たとえば出走馬の実力に関係なく、競馬のポスターやCMなどから何かのサインを見つけたり、その時期に起きていた出来事のキーワードや数字に着目し、それを勝ち馬に結びつけたりします。自分の誕生日、記念日に絡んだ数字の馬券を買うのも、ケントク買いの一種といえます。

会社の先輩のAさんはケントク買いを得意としていて、もはや「大家」の域に入ります。私は競馬を全く知らずに会社に入りました。ですから、初めは自分で予想することができず、競馬新聞の印で本命を意味する「◎」が多くついた馬の馬券ばかり買っていました。それを見たAさんは「小林クン、それじゃ馬券は当たらないよ」と、教えてくれたのがケントク買いでした。

Aさんの話は中継で解説者の話す内容とはまるで違いました。各馬のレースぶりや調教のタイムうんぬんは全く口にしませんでした。しかし、不思議とAさんはケントク買いで馬券を的中させていました。今でも覚えているAさんのケントク買いを以下に書きます。

レース名から予想

(その1)1991年夏の新潟で行われた佐渡ステークスで、Aさんはオカフネという馬が間違いなく勝つと主張し、「佐渡にはみんな陸(オカ)から船(フネ)に乗っていくんだよ。この馬だよ」と豪語しました。見事、オカフネは勝ったものの単勝1番人気だったので馬券的な妙味はなく、Aさんはつまらなさそうにしていました。

(その2)2002年のオークストライアル、フローラステークスにはニシノハナグルマが出走。9番人気と評価は低かったのですが、Aさんは「フローラはローマ神話に出てくる花と春と豊穣(ほうじょう)をつかさどる女神なんだって。だから花車でいいよね」と言って狙い、結果ニシノハナグルマが勝ってAさんはしてやったりという表情でした。

(その3)14年の京王杯2歳ステークスでは11番人気のセカンドテーブルに戸崎圭太(けいた)騎手が騎乗したことにAさんは注目。「知ってる? 京王電鉄のキャラクターの名前は『けい太くん』なんだよ」と言ってセカンドテーブルを中心にして買い、馬連9560円の高配当を手にしていました。

世の中の出来事から予想

(その1)02年のラジオたんぱ賞。Aさんは「きょうはサッカーの決勝があるだろう。カッツミーだよ」と言い切りました。当日(6月30日)は同年開かれたワールドカップ日韓大会の決勝、ブラジル―ドイツ戦が横浜で予定されていました。

なぜカッツミーなのか聞くと「父親がサッカーボーイだよね。決まりだよ」と言って、Aさんは8番人気のカッツミーから馬券を買って高配当をゲットしました。

第35回フェブラリーステークスを制したノンコノユメ(左)。中央は2着のゴールドドリーム=共同

(その2)10年の天皇賞・春は5月2日に行われ、翌日には福岡市で「博多どんたく」が行われました。出走メンバーにメイショウドンタクがいたため、Aさんは「あすは博多どんたくがあるから、時節柄メイショウドンタクでしょう」と力説。メイショウドンタクは16番人気で、「まさか……」と思っていたら、メイショウドンタクは3着に入り、3連複と3連単は万馬券! 素直にAさんを信じるべきだったと後悔しました。

様々なヒントから予想

(その1)女優の水谷八重子さんは中央競馬の馬主で、かなり昔、まだ「2代目水谷八重子」を襲名する前の水谷良重だったころの話です。当時、水谷さんの所有馬が出走するレースがあり、Aさんは「これは水谷良重さんの馬がくるよ」とご託宣。Aさんは「今の馬場状態を見てみなよ。芝コースが『良』でダートコースが『重』なんだよ。『良重』じゃないか」と興奮していました。そしてその馬場状態でレースは行われ、水谷良重さんの馬が馬券に絡みました。うならされました。

(その2)1990年の桜花賞。Aさんは当時、大阪支社に勤務していましたが、当日の阪神競馬場ではファンサービスとして来場者に花の種が配られたそうです。レースは1番人気のアグネスフローラが勝ちました。Aさんは「花の種だからね。アグネス『フローラ』が勝つんだと確信したね。最高のヒントだったよ」と今でも懐かしそうに振り返ります。

羽生は2大会連続の金メダルを獲得したが、ゴールドドリームの連覇はならなかった

もちろん、いつもケントク買いがうまくいくわけではありません。馬券が外れることの方が多いと思います。しかし、Aさんのレベルまでいくと感心します。その着眼点は素晴らしく、まさにファンタジーといえます。

「ゴールドメダル+連覇」?

私もAさんほどではありませんが、ケントク買いをすることがあります。2月18日のG1、フェブラリーステークス。昨年の覇者ゴールドドリームの連覇なるかが注目されました。前日の17日は平昌冬季五輪でフィギュアスケート男子のフリーが行われ、羽生結弦選手(ANA)が2連覇を達成しました。連覇で金メダルです。「これで『ゴールド』ドリームが2連覇するね」と言う人が周囲にもかなりいました。安易だとは思いましたが、私も翌日の新聞に「羽生に続いてゴールドドリームが連覇!」という見出しが載ると想像して、ゴールドドリームの単勝も買いました。しかし、結果はゴール前で交わされ2着。まあ、ケントク買いでもなんでも当たるときは当たるし、外れるときは外れますよね……。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 小林雅巳)

 各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック!
http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

すべての記事が読み放題
まずは無料体験(初回1カ月)

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン