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道産子「シット」で疾走 産官学で一から設計

バイアスロン女子 新田のんの

「道産子」のシットスキーが平昌の大舞台を疾走した。10日のバイアスロン女子6キロ座位でパラリンピック初出場を果たした新田のんの(21、北翔大)。下半身まひで腹筋も使えない中、最大限のパワーを生み出せるよう工夫されたシットは、北海道の産官学が手探りで開発した特注品だ。

「今までの中で一番フィットしていた。これで臨めてよかった」。16人中13位という10日のデビュー戦を終えた新田は、緑色にコーティングされた「相棒」に目を落として笑顔を見せた。

公式練習する新田(7日)=横沢太郎撮影

札幌市出身の新田は下半身がまひした状態で生まれ、「体の前の方はへそから下の感覚が全くない」。スキー距離・バイアスロン日本代表の荒井秀樹監督に誘われて競技スキーを体験したのは2015年。すぐに魅力に取り付かれて「冬季パラリンピックを目指そう」と決意したものの、最初に乗ったシットは男子選手から譲られたサイズの合わないものだった。

国内のスキー距離競技でシットに乗る選手は少ない。地元で作れる事業者もほとんどないという壁にぶつかると、自身も北海道出身の荒井監督は道内でのゼロからの開発を提案。道庁や道内の大学が協力して16年春にプロジェクトが立ち上がり、予算はクラウドファンディングで集めた。

「選手の身体機能の一部を代替するから工学研究が入る余地が大きい」と話す鈴木聡一郎・北見工大教授(ロボット工学)のもと、まずはモーションキャプチャーで滑りを解析。座位の選手の推進力は両腕のストックでどれだけ雪面に力を伝えられるかで決まるから、座面や背もたれの角度を何度も変えて設計図に落とし込んだ。

この試みに高い技術力で応えたのが、社会福祉法人クピド・フェア(岩見沢市)だ。パラアイスホッケー用具のアルミ加工などを手掛けるノウハウを生かし、16年末に「1号機」が完成。その後はワールドカップなどの実戦を通して改善点を探り、新田が在学する北翔大でも実験を重ねた。軽量化や重心位置の変更を加えた「2号機」が平昌の雪上を滑った。

21歳の新田は今後も地元を拠点に世界に挑むつもりで、札幌市は26年の冬季五輪・パラリンピック開催も目指している。シットはほぼオーダーメードのため量産化が難しいが、荒井監督は「下半身に障害がある子供は北海道でもスキーをする機会がほぼない。シットが身近な存在になれば、パラ競技の選手も生まれやすい」と環境改善の好機としたい考えだ。

北海道の大きな期待が詰まったシットに乗る新田は、14日以降も3レースに出場予定。オール道産子で紡ぐ長い物語は始まったばかりだ。

(鱸正人)

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