7万円以下で選ぶ 初心者向けクロスバイク5選

新生活が始まる春に向けて自転車の購入を検討している読者は多いと思う。もしスポーツサイクルの購入を考えているなら「クロスバイク」を候補に加えてはいかがだろう。通勤や通学、買い物、サイクリングまでこれ1台で対応できる汎用性の高さが何よりの魅力だ。その魅力が評価され、自転車全体での販売が低迷するなか、クロスバイクは2017年8月以降、1店舗あたりの販売台数がプラスとなっている(注)。今回はクロスバイクのなかでも最も売れ筋のエントリーグレードに属する7万円以下の最新モデル5台を紹介しよう。
本来、クロスバイクとは、ロードバイクとマウンテンバイク(MTB)の特性を併せ持った(クロスオーバーした)自転車のことをいう。MTBゆずりの丈夫でコンパクトなフレームに、高速巡航性に優れた700Cサイズのスリックタイヤや前傾姿勢がゆるく、低速走行時に扱いやすいフラットハンドルバー、ワイドなギア比設定というのが一般的なクロスバイクの定義だ。よりロードバイク色を強めた「フラットバーロード」と呼ばれる派生形も存在するなど、同じクロスバイクのなかでもさらにカテゴリーの細分化が進んでいる。
いずれにしてもロードバイクに比べると路面状況に対して寛容で、初心者でも乗りやすいのがクロスバイクの大きな長所だ。また、スポーツサイクルでありながら、泥よけやリアキャリアを装備するための台座を備えたモデルも多い点も特徴だ。
以前はMTBのようにサスペンション付きフロントフォークを装備したクロスバイクも多かったが、街乗りではあまり必要性がないためか現在はサスペンションのないリジッドフォークを採用するモデルが主流となっている。
(注:自転車産業振興協会「自転車販売動向調査」)

フルモデルチェンジした軽量モデル
エスケープ R3は長年にわたって支持されている定番モデル。その魅力は何といっても手に入れやすい価格でスポーティーな「走り」が楽しめること。その大きな要因となっているのがコンパクトで軽量なアルミフレームとホイールだ。
スポーツサイクルにおいて、フレームとホイールは走行性能を左右する重要な部分だが、ジャイアントはどちらも自社で設計、製造を行っている。10.7キログラム(465ミリサイズ)という車重はこの価格帯のクロスバイクのなかでは頭ひとつ抜けて軽く、700×28Cというクロスバイクにしては少し細身のタイヤを組み合わせることで、ペダルの踏み始めから思わず「おっ」と声が出るような鋭い加速を実現している。
また、カラーバリエーションが5色と豊富な点も消費者にはうれしいところ。売れているモデルは街で同じバイクと遭遇する確率も高いからだ。
フレーム:アルミ
フロントフォーク:クロモリ
変速ギア:3×8速
タイヤサイズ:700×28C
問い合わせ=ジャイアント
www.giant.co.jp/

ロングツーリングも楽しめる
トレック FX3もエスケープ R3と同様、クロスバイクの定番として長く支持されているモデル。振動・衝撃吸収性に優れるカーボン製のフロントフォークや、衝撃吸収材を組み込んだ専用ハンドルバーを標準装備するなど、全体的に長距離走行時の快適性を重視したパッケージングだ。通勤や買い物といった日常的な用途だけではなく、1日で50キロから100キロを走るようなロングツーリングにも使いたいユーザーにはうってつけの一台だ。

また、ライトなどのアクセサリーをスマートに取り付けられる独自のステム(フレームとハンドルバーをつなぐ部品のこと)や、速度や走行距離などのデータを計測してコンピューターやスマートフォンに送信するANT+/Bluetooth Smart対応のセンサーをフレームに内蔵できるなど、スポーツライドをより楽しむための発展性も秘めている。2018年3月から、クラシックな意匠の「FX LTD」というモデルも追加され選ぶ楽しみが増した。
フレーム:アルミ
フロントフォーク:カーボン
変速ギア:3×9速
タイヤサイズ:700×32C
問い合わせ=トレックジャパン
https://www.trekbikes.com/jp/ja_JP/

初心者にも乗りやすい一台
ロードからマウンテンバイクまで、カテゴリーを選ばず支持され、トレックやスペシャライズドと並び米三大ブランドのひとつとして知られるキャノンデール。そんな同社のクロスバイクがこのクイックシリーズだ。
もっとも安価なモデルはクイック7だが、筆者はできればそのひとつ上のグレードであるクイック6をお薦めしたい。4000円プラスするだけで、ギアの段数が24段から27段になるほか、タイヤもより耐パンク性に優れたものが装備されるからだ。
また、ロゴやグラフィックが高輝度リフレクター素材となっており夜間走行時での視認性を高めてくれる。後輪を支持しているフレーム後ろ側の三角部分を「シートステー」と「チェーンステー」と呼ぶが、キャノンデールはその部分を平べったい形状にして縦方向の衝撃を和らげる「SAVEマイクロサスペンション」という独自機構を用いる。フロントフォークを寝かせ気味にした安定性重視の車体設計と相まって初心者に乗りやすい一台といえるだろう。
フレーム:アルミ
フロントフォーク:スチール
変速ギア:3×9速
タイヤサイズ:700×35C
問い合わせ=キャノンデール・ジャパン
http://www.cannondale.com/ja-JP/Japan

おしゃれで便利なコミューター
他の4台とは少し趣向が異なり、レトロ風のルックスをもつ一台。フレーム素材にはアルミが普及する以前に主流だったクロモリ鋼を採用し、トップチューブ(フレームの上辺のこと)を水平にデザイン。これはホリゾンタルフレームと呼ばれ、トラディショナルなロードバイクによく用いられるディテールだ。
レザー風のサドルやグリップ、真ちゅう製のベル、側面が肌色のサイドスキンタイヤなど、各部のパーツもクラシックを意識したものとなっている。用途を街乗りに割り切っているためフロントギアが1枚のみの8段変速を採用。急な登坂など、苦手なシチュエーションはあるが、その分、価格が安く、変速調整の手間が減るというメリットもある。泥除けやバスケットなどのアクセサリーも用意されているので、おしゃれで便利なコミューターとして活用したい。
フレーム:クロモリ
フロントフォーク:スチール
変速ギア:1×8速
タイヤサイズ:700×32C
問合せ=ブリヂストンサイクル
www.bscycle.co.jp/

走行性能と快適性を両立
スペシャライズド・シラスは、スピードと快適性というクロスバイクにとって重要な要素を高次元で両立させた一台。最新のフィッティングツール「リトゥール」で計測した男女数千人分のデータに基づいてフレームのジオメトリー(各部の長さや角度などのこと)を決めたという。サドルやグリップなどライダーが直接触れる部分には人間工学を取り入れて設計したパーツを採用した。ただし、変速ギアが21速しかないなど、ドライブトレーンの仕様は同価格帯のライバルと比べてもやや物足りない。フレームの潜在能力は高いので、さらなるパフォーマンスを得たいなら購入後にグレードアップするのもいいだろう。
フレーム:アルミ
フロントフォーク:スチール
変速ギア:3×7速
タイヤサイズ:700×32C
問い合わせ=スペシャライズド・ジャパン
https://www.specialized.com/jp/ja
(ライター 佐藤旅宇)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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