2018年12月16日(日)

家電、アジアで稼ぐ
パナソニック100年 次の成長を描く(2)

2018/3/13 6:30
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パナソニック100年の歴史で長く中核を担ってきた家電事業。ただプラズマテレビの大型投資があだとなり、経営危機を招いた「戦犯」としても記憶に新しい。白物家電や空調機器にシフトし、改革を進めたアプライアンス(AP)社の本間哲朗社長は、海外展開や他社との積極的な連携を今後の戦略に掲げる。

アプライアンス社の本間哲朗社長

アプライアンス社の本間哲朗社長

――2015年4月の社長就任からまもなく3年がたちます。

「家電部門は10~12年度にかけて大きな損失を出した。会社が存続の危機にひんするような事態を招いたカンパニーとして、国内外で稼げる『自立した事業体』に復帰することが最大の目標だった。まずテレビなど音響映像製品から白物家電と空調機器に経営資源や技術者を移した。販売も従来の『欧米市場中心主義』を転換し、成長性が高い東南アジアや中国に力を入れた。18年度からインドに軸足を移す」

――海外の成長戦略は。

「中国は小型の家電製品は実店舗からインターネット通販に思い切ってシフトしている。中国の現地法人に17年に電商本部という電子商取引(EC)専門の営業部隊を組織した。中国・アリババ集団や京東集団など現地のEC事業者と一括で商談できるやり方に変え、うまくいっている。美容家電『ナノケアシリーズ』のヘアドライヤーは中国で14年度に2万台を販売したが、17年度は40倍の80万台の販売を見込んでいる。18年度は小物家電の6割以上がECで販売されるだろう」

「ナノケア」ドライヤーは中国のネット通販で80万本売る

「ナノケア」ドライヤーは中国のネット通販で80万本売る

――これからの100年に向けた取り組みは。

「海外の家電事業が収益を伸ばせるようにすることが大きな課題。商品開発やマーケティングの権限を各地域に移し、各国の需要に合わせて商品を作り替えている。3年かけて販社をAP社の傘下に置くという改革を進めた。4月に欧州と米国が入り、その後台湾も加わって一区切りする」

「AP社の強みは技術者の約4割が海外に勤務し、地域の需要をくみ取れること。ただ地域ごとに最適な商品を作ると部品点数が増え、もうかりにくくなる恐れもある。約2年前から基幹部分は日本の事業部が設計し、世界で統一しながら仕上げる方法を取り入れようとしている」

――他社との連携はどう進めていきますか。

「コトを起こすのがあまり得意でない。連携で、楽しんで生活の質を上げるような提案が大事だ。今までスマートフォンなどで世の中とつながってきたが『IoT』家電はそのまま社会につながる。共働き世帯の時間を創出することにお金を使ってもらえるか、といったことを検証している」

花柄をあしらった冷蔵庫など、インドの風習にあった白物家電を現地で独自開発している(インドのショールーム)

花柄をあしらった冷蔵庫など、インドの風習にあった白物家電を現地で独自開発している(インドのショールーム)

――投資計画は。

「16年に買収した業務用冷蔵庫メーカー、米ハスマンのような大型のM&A(合併・買収)はしばらくないと思っている。ただ空調事業でエンジニアリングやディストリビューション(流通)関係は発掘していきたい。今後は好調なミラーレスカメラにしっかり投資していきたい。きっちりと利益を稼ぐことが我々の大きな役割。ホームエンターテインメントは少し絞って、他事業に注力するといった整理もしていかなければいけない」

「今与えられているミッションは最先端技術の開発ではないと理解している」。本間氏は1日、都内で開いた家電事業の説明会でこう話した。産業全体でイノベーションの起こる分野が電化製品から自動車の分野にシフトしてきたという見方だ。パナソニックの場合も、現在最も力を入れるのは車載電池をはじめとした自動車関連だ。

では、これからの家電事業をどう位置づけていくのか。アプライアンス社では今、様々な模索が始まっている。2016年から始まった「ゲームチェンジャーカタパルト」はそのひとつ。若手社員がとがった製品やサービスのアイデアを考案し、事業化を目指す。3月中には社内から独立して起業したい社員らを資金面で支援する新会社も設立する。

本間氏は「会社にはボトムアップのチャレンジがないといけない」と強調する。100年前に創業者、松下幸之助氏がゼロから事業を起こしたように、ベンチャー精神に富んだ若手社員の力はパナソニックの家電事業の次の100年を切り開くために必要不可欠だ。

(大阪経済部 大沢薫)

[日経産業新聞2018年3月9日付]

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