2019年8月24日(土)
スポーツ > 支える > 記事

支える

フォローする

シート下頼れる魔術師 選手の感覚つかみ調整
サスペンション開発者 鈴木友也、石原亘

2018/3/13 2:30
保存
共有
印刷
その他

平昌パラリンピックで活躍が続くアルペンスキー座位の日本選手。座ったまま操作するチェアスキーに欠かせないのが、雪面の衝撃を吸収し、かつ的確にスキーに力を伝えるサスペンションだ。「縁の下」ならぬ「シートの下の力持ち」ともいえる用具。その調整を担当するスタッフも、まさにそんな陰の功労者だ。

村岡のサスペンションを調整する鈴木友也さん

村岡のサスペンションを調整する鈴木友也さん

2月下旬、長野・菅平高原スキー場。一滑りを終えた日本代表女子座位の村岡桃佳(早大)が、サスペンションの感想を伝えた。

「踏んでいく感じが気持ち悪いんです」

「それはモヤモヤな感じ? ビコビコな感じ?」と尋ねたのは鈴木友也(40)。

「モヤっとします」

鈴木がネジを少し回すと村岡は「こっちの方がいい」。魔術師のような手際を見せる鈴木に、ある選手は「チームで一番心強い味方」と言うほど絶大な信頼を寄せる。

15歳でモトクロスを始めた。高卒後、レースを転戦し2005年、サスペンションメーカーのKYBにテストライダーとして入社する。実際にバイクで性能を試しては開発現場にフィードバックする仕事。レースは続け、アジア選手権で総合優勝も果たした。

14年夏、チェアスキー用サスペンションの開発を命じられる。1998年長野パラリンピックから日本代表に製品を提供していた同社だったが、サポート体制が十分でなく、14年ソチ大会では全選手が海外製に切り替えた。巻き返しを図るための特命だった。

初めてチェアスキーを見た印象は「思ったよりスピードが出ている」。選手から要望を聞き、「伸びたり縮んだりはバイクと一緒」とイメージを固めていった。選手が口にするフィーリングが、バイク乗りである鈴木には腹落ちする。その感覚を開発に生かした。

選手からチェアスキーの調整具合を聞き取る石原亘さん

選手からチェアスキーの調整具合を聞き取る石原亘さん

設計を担ったのはKYBのエンジニア、石原亘(33)だ。スノーモービル用の設計をしていたが、石原が北海道出身と知った上司の「スキー、できるか?」の一言でプロジェクトに関わる。

鈴木と異なり、石原はとまどった。アルペンには掘れたバーンでターンする技術系種目と、フラットなコースを滑る高速系種目がある。前者はモトクロス、後者はロードバイクのレースに似て「2つの要素を両立させるのが難しい」。

試作機は15年1月に完成。恐る恐る選手に使ってもらったら、代表の鈴木猛史が「板の音が静かになった」との感想。凹凸の雪面に板が吸い付いている証拠だ。同年3月の世界選手権ではその鈴木猛が金メダル。「うれしかった。こんなに早く結果が出るのかと信じられなかった」と石原。

鈴木と石原は海外の合宿や世界選手権にも同行。要望があれば雪上でかじかむ手を動かしながらサスペンション内の金属片を入れ替え、硬さを調整した。それを見たからか、海外製に"浮気"をする選手はもういない。

実は鈴木は個人的な事情で昨年末にKYBを退社したのだが、選手たっての要望で直前合宿から再びチームと行動を共にしている。石原とともに平昌に滞在、サポートを続ける。

アルペン座位はすでに3つのメダルを獲得。大会前、鈴木はこう語っていた。「結果は選手のものですから。メダルをとったのは選手です」。どこまでも「縁の下」に徹するつもりでいる。=敬称略

(摂待卓)

支えるをMyニュースでまとめ読み
フォローする

保存
共有
印刷
その他

平昌パラ 注目の日本勢

電子版トップスポーツトップ

支える 一覧

フォローする
村岡のサスペンションを調整する鈴木友也さん

 平昌パラリンピックで活躍が続くアルペンスキー座位の日本選手。座ったまま操作するチェアスキーに欠かせないのが、雪面の衝撃を吸収し、かつ的確にスキーに力を伝えるサスペンションだ。「縁の下」ならぬ「シート …続き (2018/3/13)

視覚障害のカテゴリーで出場する高村(左)のガイドを務める藤田=横沢太郎撮影

 平昌パラリンピックで日本から9人がエントリーしているスキー距離とバイアスロン。選手登録こそされていないものの、選手に劣らない重責を背負ってレースに臨むのが、ガイドスキーヤーの藤田佑平(25、早大院) …続き (2018/3/12)

平昌パラリンピックのアイスリンクで選手に指示を出す信田コーチ(中)=横沢太郎撮影

 2大会ぶりのパラリンピック出場となるパラアイスホッケー日本代表。この1年、海外駐在で不在がちだった監督の中北浩仁(54)に代わり、指揮を執ったのがコーチの信田憲司(57)だ。アイスホッケーの強豪、国 …続き (2018/3/10)

ハイライト・スポーツ

[PR]

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。