2014年に埼玉県朝霞市の少女(17)が誘拐され、16年3月に2年ぶりに保護された事件で、未成年者誘拐や監禁致傷などの罪に問われた寺内樺風被告(25)の判決が12日、さいたま地裁であった。松原里美裁判長は「計画性が高く、卑劣で悪質な犯行。少女の貴重な時間が奪われた」として懲役9年(求刑同15年)を言い渡した。
弁護側は犯行時の刑事責任能力が限定的だったと訴えたが、松原裁判長は判決理由で「発覚を免れる工作をしており、違法性を認識していたのは明らかだ」と完全責任能力を認定。起訴内容の通り監禁期間は約2年と認め、「監視が2年にわたったとの認識はない」との被告の主張を退けた。
量刑の判断では「自分より弱い女性を隔離して観察したいとの動機に酌量の余地はなく、大切な思春期を失った被害者の処罰感情が厳しいのは当然」と指摘。その上で、少女への暴力がなかったことなどから検察側の求刑は重すぎるとした。
判決は当初、17年8月に言い渡される予定だったが、寺内被告が奇声を発し、「私は森の妖精です」などと脈絡のない発言や不規則発言を繰り返したため、延期になっていた。12日の判決公判では、裁判長の質問に淡々と答え、言い渡し後に一礼した。
判決によると、寺内被告は14年3月、当時中学1年だった少女を車に乗せて誘拐。千葉市や東京都中野区の自宅マンションで監禁し、少女に重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせるなどした。
事件が発覚したのは16年3月。行方不明だった少女が中野区のマンションから逃げ出して公衆電話で助けを求め、保護された。寺内被告は逃走したが、静岡県で警察が身柄を確保。自殺を図って首に切り傷があったため、入院後に逮捕された。
少女の母親は公判で「娘は1人で外出ができない。社会復帰できる日が来るのか不安だ」と証言。「娘の心の大きな傷が消えることはない。(被告には)一生刑務所から出てきてほしくない」と厳罰を求めていた。