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チェアスキー 日本で進化 トヨタの技術で軽量化
アルペン森井、10日使用

2018/3/9 20:20
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平昌パラリンピックのアルペンスキーでは、脊髄損傷などの障害でチェアスキーに乗る座位の選手の活躍が期待されている。チェアスキーは日本で進化し、世界へ「メード・イン・ジャパン」が広がった。今回、モノ作りニッポンの代表格といえるトヨタ自動車が参入して最新鋭機を開発。再び大きな注目を集めそうだ。

80年に完成したチェアスキー1型機

80年に完成したチェアスキー1型機

米国で生まれたチェアスキーが日本に紹介されたのは1970年代前半。スキーの経験がある障害者から欲しいという声があがり、「日本にないならば作っちゃおうと思った」と神奈川県総合リハビリテーションセンターの沖川悦三主任研究員。福祉用具を製造していた同センターが、黎明(れいめい)期の開発を担うことになった。

試行錯誤の末に80年に1型機が完成。ただソリに近い代物で、「斜度20度以上にはいけないし、リフトにも乗れなかった」(沖川さん)。もっと高度なチェアスキーを求める人も増え、発想を転換した。「障害者を助けるための機能をやめ、本人に残された力を信じて余分なものを取った」

コブ斜面での衝撃も吸収できるよう、バイクで使うサスペンションのようなバネをシートと板の間に入れた。その後、金属製の四角形のフレームでシートを支える形にして、今のチェアスキーの原型ができあがる。この4型機を使った日本人選手が90年世界選手権で銀1つ銅2つのメダルを獲得する成果を出した。

強度アップとともに、軽量化のためにフレームをアルミニウム合金にするさらなる進化を支えたのが、福祉機器メーカーの日進医療器(愛知県)だ。付き合いがあった同センターの依頼で開発に参加した日進は、強度は高いが加工の難しいアルミのフレームを実現。98年長野パラリンピックで日本選手が使用、広く一般発売された「長野モデル」に結実させた。

98年長野パラリンピックで使われた長野モデル

98年長野パラリンピックで使われた長野モデル

その後、パラリンピックごとに新しいモデルを開発。2010年バンクーバー大会前から外国にも販売を始めた。日進の山田賀久課長は「米国とカナダチームの合同合宿で使ってもらったら、健常者の時のスキーと同じ感覚で滑れて懐かしいと言われ、うれしかった」と述懐する。海外での人気はうなぎ登りで、14年ソチ大会ではアルペン男子15個のメダルのうち、11個が日進製を使った結果だったという。

今回、"巨人"トヨタの参入は14年8月にアルペン日本代表の森井大輝が同社に転職したことがきっかけだ。森井はテレビ番組で見た豊田章男同社社長の車作りへの思いに共鳴。ソチ大会でも金メダルを逃し、海外勢の台頭を目の当たりにしたことから、入社後、新たなチェアスキー開発の必要性を直訴した。

これを受け15年夏、日進との共同プロジェクトがスタート。普段は自動車の設計をしているトヨタの榎本朋仁主任は「弊社がパラリンピックのパートナーとなり、アスリートへの支援を強化してトヨタ製品にも生かしたい」と理由を説明する。

ここで威力を発揮したのが、コンピューターの解析ソフトだ。車両開発に使う同社独自のソフトをチェアスキーにも応用した。「スキーの動きを解析して正しい結果が出るか疑問だった。でも、従来の日進のモデルのデータを入れると、フレームのここが弱いと出てきた部分が、過去に壊れた部分と一致したのでいけると確認できた」と榎本主任。日進の山田課長も「これまでの経験則でやってきた方法ではできなかった」と舌を巻く。

「隼」を前にした日進医療器の山田課長(左)とトヨタ自動車の榎本主任

「隼」を前にした日進医療器の山田課長(左)とトヨタ自動車の榎本主任

ソフトのおかげでフレームの強度を保ったまま、必要のない部分は省いて軽量化することに成功。約11キロだったソチモデルに比べ1キロ以上軽くなった。森井は「リカバリーをしようとする時に動作をものすごく速く行えるようになった」と評価。榎本主任は「彼は一つも妥協しない。車開発の仕事以上の緊張感があり、携われたのは幸せだった」とエンジニア冥利に尽きるといった表情だ。

昨年9月に完成した新型チェアスキーの名前は「隼(はやぶさ)」。「響きがいいのと、速くてかっこいいイメージがある。漢字一文字だと海外でもうけるかな、というのもあった」と山田課長。森井は10日、最初の種目の滑降にこのスキーで出場する。悲願の金メダルを取り、ニッポンのモノ作りの粋を世界に知らしめたい。

(摂待卓)

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