2018年12月11日(火)

CNS樋口社長「ほんまもん」へ脱ハード
パナソニック100年 次の成長を描く(1)

2018/3/12 6:30
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創業100年を迎えたパナソニック。リーマン・ショック後の経営危機から再生を果たし、次の100年に向けた成長をけん引するのが4つの社内カンパニーだ。そのトップに将来のビジョンを聞いた。初回は津賀一宏社長が昨春、三顧の礼で招いた樋口泰行氏。企業向けシステムなどを手掛けるコネクティッドソリューションズ(CNS)社長を務める。

CNSの樋口泰行社長

CNSの樋口泰行社長

――次の100年の成長をどう描きますか。

「中国など新興国メーカーが、あらゆるハードをコモディティー(汎用品)化している。同じ土俵で戦っては次の100年どころか10年ももたない。ハード製造が中心という従来の考え方からレイヤー(階層)を引き上げ、ハードとソフトを組み合わせた顧客起点のソリューションビジネスに移行する」

「AI(人工知能)やあらゆるモノがネットにつながる『IoT』が話題だが、ネット経由のサービスは(米グーグルなど)世界の巨大IT(情報技術)企業が有利。パナソニックはものづくりの『匠の技』を業界ごとの知見や経験を生かしてソリューションビジネスに置き換えるところを着実にやる」

――どの分野に力を入れますか。

「これまではモノを作る現場、製造業に焦点を合わせていた。今は『運ぶ』『売る』といった非定型的な仕事が多い現場で、省人化や自動化が喫緊の課題になっている。これを製造業で培った技術やノウハウを生かして解決していく」

「具体的には食品工場の自動化装置を製造するベンチャーのスキューズ(京都市)や流通向けシステム開発のヴィンクスと提携した。昨年始めたIoTサービス『ミューソケッツ』のような基盤ビジネスも進めている。工場自動化分野では独シーメンスと協業し、複数メーカーの工場設備も統合管理できるシステムを提供している」

――稼ぎ頭である航空機向け娯楽システムは失速しています。

「市場シェアが高く、市況変動に左右される。特に長距離を飛行する大型航空機が年間に何機製造されるかで納入額が大体決まってしまう。18~19年の生産台数は従来より減る見込みで、自助努力によってテコ入れするのは難しいだろう。すでに販売済みの娯楽システムの保守メンテナンス事業は安定的に稼げるため、今後強化していく」

――CNS全体の営業利益率を10%超に高める目標を掲げています。

「18年3月期は8.5%を見込んでいる。現状の延長線上でも10%に届くかもしれない。しかしコモディティー化していく事業を抱えていれば一時的に10%を達成したとしても、いずれ10%以下に下がっていく。ビジネスを上位レイヤーに移行させるというアプローチで仕事をしないと『ほんまもん』になれない」

――まもなく就任1年です。改革の手応えは。

「社員から『別の会社に転職したみたいだ』といった声が届いている。昨年10月にCNS社の本社を大阪府門真市から東京都中央区に移転した。移転後の来客数は門真市時代の3倍、営業担当者の顧客企業への訪問数は1.5倍に増えた。こうした社内の活性化が、業績に寄与していると感じる」

「ただ社内でも改革の進捗具合に濃淡はある。昨年5、6月ごろ、部下が上司に『週報』を提出する慣習を廃止するように指示したが、今年に入っても続けている部署があった」

――創業100年をどう振り返りますか。

「日本企業全体の課題だが、競争力が落ちているのになかなか戦略を転換できない。活性化している状態でもなく、本当にやる気になっている社員の割合が低い。改革の基礎となる社風の変革などを進め、カンパニーの枠を超えて影響を与えられるように取り組んでいきたい」

樋口社長は大阪大学を卒業後、1980年に松下電器産業(現パナソニック)に入社。米ハーバード大学ビジネススクール経営学修士号(MBA)を修了後、松下に復職したが「MBAで学んだことが生かされない」と、ボストン・コンサルティング・グループに転じた。

その後、米アップル日本法人や日本ヒューレット・パッカード社長、ダイエー社長を経て2008年にマイクロソフト日本法人(現日本マイクロソフト)社長に就任。プロ経営者としてキャリアを積んできた。

樋口社長は就任初年度を「出来過ぎ」と自己採点する。半導体実装機などが好調で18年3月期の売上高は前期比6%増える見通し。特殊要因に伴う費用減も加わり、営業利益は89%増を見込み上々の滑り出しと言える。

ただパナソニック内では「まだ本領を発揮していない」との声もある。求められるのはCNSの改革で成功例を重ね、その取り組みをパナソニック全体に波及させる役割だ。外資系トップとして研さんを積み、25年ぶりにパナソニックに復帰した自らを「異分子」と称する。双肩にかかる期待は大きい。

(大阪経済部 増野光俊)

[日経産業新聞2018年3月8日付]

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