2018年4月24日(火)

地球の裏側から名医が手術 次世代通信5Gの威力
VentureBeat

コラム(テクノロジー)
モバイル・5G
2018/3/11 6:30
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 先日開催された世界最大のモバイル機器の見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」の最大の目玉は次世代高速通信規格「5G」で、通信速度が格段に上がることが実証されていた。もっとも、5Gの秘密兵器は実は「超低遅延性」だろう。この概念は理解しやすいが、アピールしにくい。米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ、英携帯通信大手ボーダフォン・グループ、中国のスマートフォン(スマホ)大手、華為技術(ファーウェイ)はこの1カ月、遅延の低減により無線の動画やビデオゲーム、仮想現実(VR)の性能が飛躍的に改善すると実証することに力を入れてきた。これらは5Gにより今後数年で様変わりする業界のほんの一部だ。

5Gでは、リアルタイムのVR映像の配信を受けながら、実際のボールをキャッチできるほど遅延が少ない

5Gでは、リアルタイムのVR映像の配信を受けながら、実際のボールをキャッチできるほど遅延が少ない

 遅延とは反応速度を指す。リクエストから反応するまでにかかる時間だと考えてほしい。スマホのウェブブラウザーにURLを入力し終えてから、ページが表示されるまでに数秒かかるのには2つの要因がある。リクエストが認識されるまでにかかる時間(遅延)と、そのページの文字や画像、映像を全てスマホに伝送するのにかかる時間(データ転送速度)だ。

 5Gは遅延とデータ転送速度を大きく改善する。反応時間は第4世代(4G)の平均50ミリ秒(0.05秒)から、1~2ミリ秒(0.001~0.002秒)に短縮。データ転送速度も4Gの平均毎秒0.02~0.03ギガ(ギガは10億)ビット(Gbps)から、0.1~5.0Gbpsに上がる。つまり、ウェブページが完全にロードされるまでに4Gでは数秒はかかるが、5Gでは1秒になる。

 Webページの話はここまでにしたい。5Gの超低遅延で最も恩恵を受けるのは、ゲーム、VR、工場、医療、自動運転車、そして交通システムだからだ。

■ゴーグルにVR映像を生配信

 ファーウェイは2日、4G/LTEゲームの最新の進化(TTI=伝送時間間隔)の短縮)を評価する試験で、端末相互間の遅延が33ミリ秒に達したことを明らかにした。これはVR以外のゲームを楽しむのに最低限必要とされる50ミリ秒を上回る。4Gで遅延が30%以上減るのはeスポーツの競技者にとっては素晴らしい改善だが、5Gが間もなく提供する水準には遠く及ばない。

 VRでは、遅延が20ミリ秒を超えるとゴーグル装着者は吐き気を感じるとされる。VRの遅延はゼロとはいわないものの、7ミリ秒未満に抑えるのが望ましい(ボーダフォンとスウェーデンのエリクソンはMWCで、遅延が15ミリ秒のVRゲームでも、ラグが0.1秒増せばどれほど不快かを実演した)。このため、現行の4GでVRコンテンツのストリーミング配信が成功する見込みはない。だが5Gの5ミリ秒未満や2ミリ秒未満の遅延では、離れた場所にあるカメラが完全に無線のVRゴーグルに3次元(3D)映像をライブで伝送すると、ゴーグルをかけている人がまさにリアルタイムで首を振るようになる。

18年2月のNBAオールスターゲームの練習時に、ブラッドリー・ビールとアンソニー・デイビスがカメラを搭載したVRゴーグルを装着。5Gのライブ映像の低遅延を実証した=ベライゾン提供

18年2月のNBAオールスターゲームの練習時に、ブラッドリー・ビールとアンソニー・デイビスがカメラを搭載したVRゴーグルを装着。5Gのライブ映像の低遅延を実証した=ベライゾン提供

 ベライゾンは先日、米プロフットボールのNFLと米プロバスケットボールのNBAの選手にカメラを搭載したVRゴーグルをかけて5G配信の映像しか見えない状態で練習してもらい、低遅延を実証した。映像は十分に「ライブ」だったため、選手は5G回線を行き交う映像を見るだけでなく、実際に「プレー」できた。

クアルコムが提唱すXRのゴーグル=クアルコム提供

クアルコムが提唱すXRのゴーグル=クアルコム提供

 超強力なサーバーで作製された5Gのビデオゲームが、ゴーグルにライブ配信される状況を想像してほしい。これが次世代のVRゲームだ。その次は、ゴーグルが必要に応じてVRにも拡張現実(AR)にもなる「XR」メガネに進化する。米半導体大手クアルコムはこのところXRの概念の開発に取り組んでおり、VRゴーグルメーカーと協力して完全に無線の次世代VR製品を近く発売したいと考えている。

■世界最高の外科医が遠隔手術

 5Gの低遅延は工場にも大きなメリットをもたらす。クアルコムはこのほど、4枚のスピニングプラッターのセットを使い、5Gにより複数の産業機械をわずか1~2ミリ秒の遅延で遠隔制御できることを示した。各プラッターの最上部には小さな穴があり、発光ダイオード(LED)の赤い光が12時の位置で見え隠れする。5Gにより、高速回転する4枚のプラッターから赤い光がコンマ数秒単位で同時に見えるよう調整され、有線のイーサネット接続に相当するほど遅延が短いことを示した。

 実際には工場でスピニングプラッターを使うことはないだろうが、工場のロボットが精密加工や検査のコマンドを処理する際には低遅延の無線回線が活用される。全く同じテクノロジーは医療にも影響を及ぼす。世界最高の心臓外科医が、地球の裏側の救命手術でロボットアームを完璧に操作している状況を想像してほしい。遠隔医療のインパクトは驚異的だ。

■自動運転、人間よりも素早く変化に対処

 機械が無線での遠隔指示に基づき、確実にサービスを提供してくれると心から信頼できる社会はやって来るのか。今は想像できないかもしれないが、答えはイエスだ。自動運転車で人間を安全に保つカギはまさに低遅延であるため、5G規格は自動車での利用を見据え、高信頼低遅延通信(URLLC)プロトコルを盛り込んだ設計になっている。

 URLLCは事実上、データを送信する5G無線ネットワークが99.999%の信頼性を満たし、干渉がなく、遅延もミリ秒単位であることを示す。速度の遅い大きなまとまりではなく、正確で速い小さな単位でデータを処理させる。ハンドル操作の指示を遠隔から細かく出すことと、動画をストリーミング配信することの違いは、後者は大量のデータが必要だが、データが届くのが遅れても誰の命も奪わない点だ。

 5Gで人工知能(AI)とURLLCを組み合わせれば、世界の数百万台の車が地域の5G交通システムと連携し、自動で運転できるようになる。近い将来、自分の車が他の車やネットワークと交通データを共有し、人間よりも素早く変化に対処し、事故が起きたら緊急車両と速やかにやりとりできるようになる。人間からコンピューターに運転を譲り渡せば、自動車事故の発生件数は減ると大半の技術者はみている。

 世界を大きく変える進化のカギを握るのは、実は遅延だ。このため、5Gで映画のダウンロードやウェブ閲覧の速度が上がると次に耳にした際には、5Gにはもっと多くの特徴があり、反応の良い無線機器が大きな変化をもたらしてくれることが分かるだろう。

By Jeremy Horwitz

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

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