震災7年 人を結ぶ「あったか」東北シェア

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2018/3/11 6:30
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東日本大震災から7年になろうとしている。東北でシェアリングエコノミーを復興に生かそうとする動きが広がっている。民泊で住民と来訪者の交流を深めたり、クラウドソーシングで雇用を生んだりして地域経済の活性化を狙う。被災地は人口減や産業空洞化などの課題を抱える。物や時間の共有を通じて絆をつくり、地域再生に挑む。

釜石「また来たい」民宿

特産のカキを使った菓子を提供する藤井サヱ子さん(右)(2月26日、岩手県釜石市)

特産のカキを使った菓子を提供する藤井サヱ子さん(右)(2月26日、岩手県釜石市)

「都会ではできない体験でリフレッシュできた。また行きたい」。2月に岩手県釜石市を訪れた男子大学生は振り返る。男性は友人と被災地の現状を見て回り、釜石市の農家に宿泊した。農家で栽培しているカキの木の手入れを手伝い、郷土料理のすいとんを作って食卓を囲んだ。

泊まったのは農家レストランを経営する藤井サヱ子さん(73)の自宅だ。藤井さんは震災後にボランティアらを家に泊めた経験を持つ。2017年から民泊仲介サイトの米エアビーアンドビーに登録し、カナダや台湾からも宿泊者を受け入れた。藤井さんは「若い人の話を聞くのは楽しい」と笑みを浮かべる。

藤井さんが民泊を始めたのは、釜石市役所の働きかけがある。釜石市は19年ラグビーワールドカップ(W杯)の開催地に選ばれており、国内外から多数の来訪者が見込まれる。1万6000人収容する競技場を建設中だが、市内の宿泊施設は1300室しかない。

そこで市は民泊を来訪者の受け皿にする方針を打ち出した。訪問者数のピークに合わせてホテルを建設するのは、日本全体で人口減が進むなか現実的ではないからだ。

釜石市オープンシティ推進室の石井重成室長(31)は「既存の住宅を利用できる民泊は一時的な需要に対して柔軟に対応できる」と指摘する。

釜石市は16年10月に日本の地方自治体として初めてエアビーと観光推進に関する覚書を結んだ。「グリーン・ツーリズム」の一環として農林水産省が推進する「農家民泊」の制度を活用し、合法的に訪問客を泊められる農家をエアビーに登録する。エアビーは旅行客の誘致や、自宅を貸す住民のトレーニングに協力する。エアビーは「世界的な民泊のプラットフォームを通じて復興に貢献できる」とする。

ハコモノは重荷に

鉄鋼業で栄えた最盛期に9万人を超えていた釜石市の人口は、現在は約3万5000人に減り、40年にはさらに4割減少すると予想されている。暮らしやすい環境を整えて定住を促進すると同時に、外部から訪れる人を増やして経済を活性化させる必要がある。

ラグビーW杯は観光客を増やす起爆剤となり得るが、一過性の盛り上がりになりかねない。宿泊施設や観光施設といったハコモノをつくれば、W杯が終わった後に遊休化しかねない。しかも、釜石を含む東北は、日本の中でも人口減少のペースが速い。ハコモノ中心の復興は、住民の重荷になる危険性がある。

だが、観光客が民泊で住民と交流を深めれば、仲良くなった住民に会うためにリピーターになる効果が期待できる。新たなハコモノを用意する必要はなく、既存の資産を生かせる。石井室長は「人が結びつく民泊は息の長い地域振興につながる」と強調する。

釜石市で民泊を手掛ける住宅は15軒程度。物件の開拓は緒に就いたばかりだ。宿泊や食事など民泊に必要な業務を1軒の住宅ですべて提供するのは負担が重く、二の足を踏む住民もいる。市では食事と宿泊する場所を分けるなど、地域が協力して来訪者を受け入れる仕組みを検討している。

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