2018年6月18日(月)

がんの変異、血液検査で一網打尽
がん治療解体新書(2)

コラム(ビジネス)
(1/2ページ)
2018/3/9 6:30
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 「人工知能(AI)を使って、今まで人類が解決できなかった病気に対して、解決の手立てを提供する。それがわれわれのグループに入ったガーダントだ」

 2017年6月。ソフトバンクグループの株主総会で、孫正義社長は誇らしげにこう述べた。米国のがん遺伝子検査会社、ガーダント・ヘルス。この会社に惚れ込んだ孫氏が400億円の資金を注入して話題になった。

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ソフトバンクの孫正義社長(右)は株主総会で、投資先ベンチャーの高い技術を紹介した(21日午前、東京・丸の内)=テレビモニターより

ソフトバンクの孫正義社長(右)は株主総会で、投資先ベンチャーの高い技術を紹介した(21日午前、東京・丸の内)=テレビモニターより

ーダントは2012年に設立されたシリコンバレーの若い会社だ。にもかかわらず、ある特定の遺伝子検査市場で8割以上のシェアを握るトップ企業でもある。

 特定の市場とは、血液を使ったがん遺伝子検査。孫社長は持ち前の勘の良さからその将来性の高さを見抜いた。5年以内に100万人のがん患者情報を解析するとの目標を掲げる。

 血液検査の有望性には国も着目、すでに動き出している。国立がん研究センターが進めているがん遺伝子検査プロジェクト「SCRUM―Japan」では17年12月からガーダントと共同で血液検査の精度検証に着手している。確認が済めばいずれがん組織を検体とする遺伝子検査同様、保険の適用対象となる見通し。

 血液を使った遺伝子検査の強みは何か。「安い早い、安全」――。国立がん研究センター東病院の後藤功一・呼吸器内科長はこう説明する。とにかく簡単なのだ。

 血液検査の場合、患者の体から血液を採取するだけでいい。がん細胞の採取のため体に針を刺し内視鏡を入れる必要があった従来の検査とは大きな差だ。

 例えば肺がんなら気管支鏡を気道に挿入しなければならない。この際、米国のデータでは気管支鏡で5人に1人が気道を損傷、回復処置に平均100万円以上の医療費がかかるという。「患者の大きな苦痛を伴い、ステージが進んだがん患者の場合は体力的に耐えられないこともある」

 検査が簡単であることの意味は大きい。患者の容体の変化に応じて小まめに検査ができるのだ。がん細胞の特徴はその姿を刻々と変えること。半年経つと全遺伝子の4割がすっかり姿を変えてしまったという論文をガーダントはペンシルベニア大学と共同で発表しており、がんの状態を逐一、把握できれば、適切な処置が可能になる。

 ■「ノイズ」を除去

精度も上がりつつある。血液にはがんの遺伝子だけでなく、その他、様々なものが流れ込む。これが難題だった。「ノイズ」が多くなかなか、がんの実態を正確にとらえにくかった。

 「人工知能(AI)の出現でこのノイズを除去することが可能になった」(ガーダントの国内責任者、塩津行正氏)。これまで4万件ものがん患者の血液を解析し、そのデータを学習させてノイズを消去した。

 ノイズのなかからがんの遺伝子を抽出する「検出感度」も高い。米ファンデーションメディシン(ボストン)はがん組織を直接、つまみ取って検査する遺伝子検査大手だが「学会発表を見るとガーダントの血液検査はファンデーションの10倍の検出感度がある」と塩津氏は話す。

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