エーザイ、メルクと提携で「レンビマ売上高3倍に」

エーザイは8日、抗がん剤の開発で米製薬大手メルクと提携すると発表した。エーザイの抗がん剤「レンビマ」について適応症の拡大など共同で開発を進め、メルクの営業力を生かして世界で拡販する。がん治療の最新手法を使ったメルクの「キイトルーダ」と一緒に使用する併用療法も開発する。主力の認知症薬とともに、抗がん剤を収益源に育てる。
「適応症や販売地域の拡大など、自社単独でやるのに比べて3倍の売上高が期待できる」。エーザイの内藤晴夫社長は同日、東京都内で開かれた記者会見で提携効果をこう強調した。レンビマの売上高は2017年3月期に215億円。20年代に自社単独で販売するのと比べ3倍の5千億円にできるとみている。
レンビマとキイトルーダの併用療法についてはすでに米国で、腎細胞がんに対して画期的な治療法として迅速審査が認められている。今後は肝細胞がん、ぼうこうがんなど6種類のがんに適応症を順次拡大していく。複数のがんを対象にした臨床試験も進める。欧米やアジアなどに広く営業網を持つメルクと協力し、販売力を高める。
レンビマの売り上げはエーザイが計上し、開発や販促費用、粗利益は両社で折半する。契約は36年まで。エーザイはメルクから契約一時金や販売目標に応じたロイヤルティー収入をあわせて最大57億6千万ドル(約6千億円)を受け取る。これらの収入を研究開発費に当て、有望な新薬を生み出すことを期待する。
メルクのキイトルーダは、小野薬品工業と米ブリストル・マイヤーズスクイブが共同開発するがん免疫薬「オプジーボ」の競合品で、効果を高めるための併用療法の開発を急いでいる。
メルクのケネス・フレージャー最高経営責任者(CEO)は1月に米サンフランシスコで開かれた国際会議で「18年はキイトルーダの併用療法の開発を進め、成長のエンジンとする」と話しており、エーザイとの提携はこの戦略に沿ったものだ。
エーザイはピーク時に3千億円以上を売り上げた認知症薬「アリセプト」のほか、潰瘍治療薬「パリエット」の特許が10年代前半に切れて以降、大型薬を生み出せていない。17年3月期は3期連続の減収となった。
米製薬大手のバイオジェンと共同開発する認知症薬「アデュカヌマブ」の登場が20年代前半に期待されるが、開発が難しい認知症薬とともに収益の柱になる薬を育てることは経営の安定上、不可欠だ。
エーザイは肝がん患者の多い中国でもレンビマの製造販売承認を17年10月に申請した。中国当局の医薬品承認規制の緩和を受け、18年内の発売が期待される。中国でがん領域を担当する医療情報提供者(MR)は30人ほどだが、内藤社長は「大型製品の投入で早期の人員拡大が必要になる」と増員の方針を示した。レンビマは米国に次ぐ世界2位の市場を開拓する切り札にもなる。
(安西明秀)