2018年12月16日(日)

古里再建、ほど遠く 上空から見た被災地の今

2018/3/8 11:35
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東日本大震災から7年を迎えるにあたり、日本経済新聞社は7日、東北地方の沿岸部をヘリコプターで上空から取材した。東京電力福島第1原子力発電所事故の影響が残る福島県は、汚染土を詰めた袋が積み上げられているのが目立った。人影がない地域もあり、町の再建にはほど遠い状態だ。一方、宮城、岩手両県は広い範囲で防潮堤が完成しつつあり、団地の高台移転も進むなど着実に進む復興を感じ取れた。

除染廃棄物を詰めた袋が積み上がる仮置き場。重機が休まず動いていた(7日、福島県富岡町)

除染廃棄物を詰めた袋が積み上がる仮置き場。重機が休まず動いていた(7日、福島県富岡町)

福島県の福島第1原発と第2原発周辺には、除染で生じた汚染土が詰め込まれた黒い袋が、住宅や農地だった場所の近くに散見された。濃淡のある2種類の緑のシートがかぶせられているところが多く、整然と並ぶ。黄色のクレーンが絶え間なく袋を積んでおり、今後もシートが覆う面積が広がっていくことをうかがわせた。

除染廃棄物の仮置き場を覆う緑色のシートが大地に浮かび上がる(7日、福島県富岡町)

除染廃棄物の仮置き場を覆う緑色のシートが大地に浮かび上がる(7日、福島県富岡町)

あちこちに保管された袋を集約し、昨年秋に本格稼働を始めた双葉町の中間貯蔵施設でも同様の光景が広がっていた。

2017年に帰還困難区域を除き避難指示が解除された富岡町や浪江町は、歩く人の姿は確認できず、道路には復興作業を急ぐトラックが数多く走っていた。農地は手入れされぬまま雑草が生い茂り、荒れ果てた状態で、上空からもさびしい雰囲気が漂っているのがわかる。

福島第1原発には原発を覆う建屋と汚染水を入れたタンクが置かれていた。現在も飛行制限がかけられ、半径3キロ圏に近づくことはできない。原発周辺地域は復興から取り残されていることが再確認できた。

山を削って造成した集団移転の町「野蒜ケ丘団地」。駅や学校も整備されている(7日、宮城県東松島市)

山を削って造成した集団移転の町「野蒜ケ丘団地」。駅や学校も整備されている(7日、宮城県東松島市)

宮城県内最大規模の仮設住宅「開成団地」では、今なお続く避難生活の様子がうかがえる(7日、宮城県石巻市)

宮城県内最大規模の仮設住宅「開成団地」では、今なお続く避難生活の様子がうかがえる(7日、宮城県石巻市)

宮城、岩手両県の沿岸部では、波立つ海のそばにそびえるように真っ白な防潮堤が建てられ、現在も増設工事が続く。一方、防潮堤の内側は盛り土や区画整理事業が進み、対照的に茶色い景観が広がっていた。宮城県気仙沼市や石巻市の漁港では多くの漁船が行き交うとともに漁網が海に浮かべられ、「漁業の町の復活」ののろしが上がっているように見えた。

同県東松島市の野蒜地区は、近くの丘陵を切り崩して「野蒜ケ丘団地」が造成。空き地はほとんどなく、真新しい住宅がひしめきあっていた。団地内にJR仙石線の駅があり、スーパーや学校なども見えた。「住宅復興の象徴」との呼び声通り、完成形に近づいているように感じた。

工事が進む復興道路「三陸沿岸道路」の橋脚がそびえる(7日、宮城県気仙沼市)

工事が進む復興道路「三陸沿岸道路」の橋脚がそびえる(7日、宮城県気仙沼市)

海岸線に築かれた巨大な防潮堤。手前には「奇跡の一本松」が見える(7日、岩手県陸前高田市)

海岸線に築かれた巨大な防潮堤。手前には「奇跡の一本松」が見える(7日、岩手県陸前高田市)

岩手県陸前高田市では今も重機が忙しく駆け回っていた。所々に台形状の盛り土があり、土色の街並みは以前と変わらず続いていた。建設中の巨大防潮堤の近くでは「奇跡の一本松」を確認できた。高台には県内最大規模の災害公営住宅「栃ケ沢アパート」もあった。

2019年ラグビーW杯の会場となる釜石鵜住居復興スタジアムの建設工事が急ピッチで進む(7日、岩手県釜石市)

2019年ラグビーW杯の会場となる釜石鵜住居復興スタジアムの建設工事が急ピッチで進む(7日、岩手県釜石市)

釜石市の鵜住居地区では、19年9月に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)で使われる「釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)」が建設中。場内をトラックが走り回り、急ピッチで作業を進めている様子が見て取れた。

被災間もない宮城県女川町(写真上、2011年3月19日)。駅前の商店街が整備され新たな町づくりが進む(同下、18年3月7日)

被災間もない宮城県女川町(写真上、2011年3月19日)。駅前の商店街が整備され新たな町づくりが進む(同下、18年3月7日)

被災間もない宮城県南三陸町(写真上、2011年3月14日)。手前の学校周辺の高台には新たに住宅地が整備された(同下、18年3月7日)

被災間もない宮城県南三陸町(写真上、2011年3月14日)。手前の学校周辺の高台には新たに住宅地が整備された(同下、18年3月7日)

約1年前に撮影した宮城県南三陸町の旧防災対策庁舎(写真上)。隣に築かれていた盛り土がなくなっていた(7日)

約1年前に撮影した宮城県南三陸町の旧防災対策庁舎(写真上)。隣に築かれていた盛り土がなくなっていた(7日)

(文=大元裕行、写真=沢井慎也)

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