東北大学の大関真之准教授と大学院生の奥山真佳さんは、原子や電子などで起こる「量子速度限界」と呼ばれる法則が目に見える大きさの物体でも成り立つことを明らかにした。従来は極微の世界の物理法則を示す量子力学特有の現象と考えられていた。無数の原子や分子の振る舞いといった原理の解明のほか、量子コンピューターの性能評価にも役立つという。
量子力学の根幹をなす「シュレーディンガー方程式」によれば、電子などがある状態から最も違う状態に変化する時間を求めると、これ以上は短くできない限界がある。極めて小さな粒子の位置や速度、エネルギーといった運動状態についても同じように限界があることが1945年に示された。これが量子限界だ。
量子速度限界はシュレーディンガー方程式を含む量子力学の「不確定性原理」に基づいていると考えられていた。大関准教授らは様々な形で検証したところ、量子速度限界はたくさん集まった原子や分子の振る舞いを説明する統計力学にも当てはまることがわかった。例えば、多くの粒子が集まった際の振る舞いの変化を計算すると、同様の速度限界が見つかった。
成果は量子コンピューターの処理速度の理論的な限界などの指標づくりにつながる。米物理学会のフィジカル・レビュー・レターに掲載された。