2018年6月22日(金)

絶えぬ震災いじめ 6割超が不快な経験

2018/3/6 11:49
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 東日本大震災の避難者に対するいじめが後を絶たない。東京電力福島第1原子力発電所事故で福島県から横浜市に自主避難した生徒へのいじめの発覚後、相次いで明らかになった。支援団体の調査によると、6割超の避難者が不快な思いをしたことも判明した。震災から間もなく7年を迎える中、「震災いじめ」を受けた女子高生は語り部として体験を伝え、サポートの輪を広げようとしている。

若者らに向け、語り部活動を続ける三浦七海さん(2017年10月、東京都千代田区)

 「避難者でお金がないんだろう」。東京都内の公立中学校。福島県から自主避難を続ける生徒が、同級生にこう言われた。生徒は「ないわけじゃない」などと反論。飲食物やゲーム代などで計約1万円の「たかり」被害に遭っていた。

 生徒側によると、中学入学以来、2016年12月ごろまで続き、学校側が双方が接触をしないようにするなどの対応をとったという。

 原発事故による避難者を支援する東京災害支援ネット(とすねっと)によると、このケースのほか、11年以降、都内の小中学校で起きた3人に対するいじめを把握したという。事務局長を務める山川幸生弁護士は「避難者いじめは常態化している」と明かす。

 震災いじめが広く知られるようになったのは、横浜市に自主避難した男子生徒のケースが契機だ。男子生徒側が市に調査を求め、16年に市教委の第三者委員会がいじめを認定。小学2年で転校した直後から名前に菌をつけて呼ばれ、小5のときは「賠償金をもらっているだろう」などと遊興費を負担させられたと証言した。

 震災いじめが表面化する中、文部科学省は17年3月に初めて実態調査を公表した。福島県から避難した児童生徒へのいじめが16年度に129件あった。とすねっとなどが17年11月~18年1月、避難生活を送る98世帯から回答を得た調査でも「悪口やひぼう中傷を言われた」が39%、「仲間はずれ・疎遠にされた」が16%に上る一方、嫌がらせをされたことがないは38%にとどまった。

 山川弁護士は「学校での担任の対応次第で助長することにもなりかねず、早い段階で十分な指導をすることが重要」と指摘する。

 

つらい経験乗り越え、伝える仙台の高校生

 「味方はいるよ」。仙台市の高校に通う三浦七海さん(18)は、自らが経験したいじめを伝える活動を続けている。多くの犠牲が出た宮城県名取市閖上地区出身で小学5年のときに被災。自宅の再建先の学区に合わせて入学した中学校で待っていたのは、いじめだった。「なぜおまえだけ生き残っているのか」などと心ない言葉を掛けられたり、仲間外れにされたりした。学校も「話は聞くけど我慢しろ」と十分に対応してくれなかった。
 転機は中学3年の時。震災の語り部として、東京から来た高校生に震災の様子を伝えている時、いじめを受けていることを思わず、打ち明けたという。「いじめがダメっていうことは分かっているはずなのになくならない。現状を知ってほしかった」と振り返る。今では被災地だけではなく、各地で自らのつらい経験を伝えている。「周囲がいじめを受けている人の話をこっそり聞いてあげるようになったり、当事者が逃げる場を作ろうと思ったりできれば」と願う。
 高校3年生の三浦さんはこの春、高校を卒業。約1年半、カナダに留学するつもりだ。「英語力を身につけ、英語でも語り部活動をしたい」と思っている。

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