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全人代代表、ネット企業が躍進 中国重視の分野鮮明

中国の全国人民代表大会(全人代)と全国政治協商会議(政協)が開幕した。全人代の代表と政協の委員は任期が5年間で、今回は大幅に入れ替わった。民営ネット企業の経営者が3倍に増えたほか、電気自動車(EV)に不可欠なリチウム、航空宇宙向け新素材、監視カメラを手掛けるテクノロジー企業の経営者が相次ぎ選ばれるなど、中国政府が重視する産業分野が明確となった。

全国政治協商会議が開幕し、演説する兪正声主席(左手前)。2段目右端は習近平国家主席(3日、北京)=三村幸作撮影

「イノベーションで成長した民営企業の経営者として政治の議論に参加して貢献したい」。政協委員に初めて選ばれたネット通販大手、京東集団(JDドットコム)の劉強東最高経営責任者(CEO)は力を込めた。ネット通販に必要な物流インフラを農村地域まで広げることなどを議論したいという。

中国メディアによると、全人代代表と政協委員で民間ネット企業から選ばれた経営者は5年前の3人から10人程度まで増えた。5年前はスマートフォン(スマホ)の無料対話アプリ「微信(ウィーチャット)」で10億人の利用者を抱える騰訊控股(テンセント)の馬化騰CEOと、ネット検索大手の百度(バイドゥ)の李彦宏董事長が目立つ程度だった。

今回は京東集団に加え、分野ごとに影響力がある民営大手の経営者が並ぶ。例えば、ポータルサイトの網易(ネットイース)、ネットセキュリティーの奇虎360、不動産サイトの北京捜房房天下網絡技術、検索サイトの捜狗、地域情報サイトの北京五八信息技術、企業向けネットサービスの猪八戒網などだ。

ネット企業経営者が急増した原因を、外資系投資会社幹部は「中国政府の意思と企業側のニーズが一致した結果だろう」と分析する。政府はネット世論や利用者の動向を詳細に把握するとともに企業を取り込んでネットによる統制を強めたい思惑があるとみられる。

企業側も政府との協力関係を深め、政府の統制への方針に素早く対応して処分や罰則を回避できる見通し。政府が主導する法整備やインフラなどのビジネス環境の整備を促し、顧客サービスの向上や新たな商機をつくり出す狙いもありそうだ。

中国政府が注力する人工知能(AI)など新技術の開発に取り組む新興企業の経営者も選ばれた。AIで音声認識の精度を世界トップ級まで引き上げた科大訊飛の経営トップが引き続き選ばれ、監視カメラシステムで世界トップとなった杭州海康威視数字技術、リチウム大手の天斉リ(金へんに里)業、宇宙向けなどの新素材を手掛ける光啓集団の経営者らが新たに選出された。

こうした分野で世界に知られるようになった新興企業の多くは、習近平(シー・ジンピン)氏ら党最高指導部や政府幹部が視察しており、国家プロジェクトなどとして技術開発を支援するケースが多い。海外投資家も資金を投じ、政府との連携強化に注目が集まる。

自動車やエレクトロニクス、エネルギーなど多くの企業の経営者も従来通り選ばれている。自動車分野では独ダイムラー株10%弱を取得したばかりの浙江吉利控股集団のほか、3社連携を進める中国第一汽車集団、東風汽車集団、重慶長安汽車の経営陣も選ばれた。

エレクトロニクスではレノボ・グループ、TCL集団、海爾集団(ハイアール)、海信集団(ハイセンス)、珠海格力電器、四川長虹電子控股集団など大手の経営トップが並ぶ。エネルギー分野でも石油化学では中国石油天然気集団(CNPC)、中国石油化工集団、中国中化集団のほか電力大手が勢ぞろいする。

中国メディアによると、国務院(政府)国有資産監督管理委員会が直接管理する大手国有企業「中央企業」97社のうち、50社で経営層が全人代代表や政協委員に選ばれた。国有大手を柱としつつ、新興企業も囲い込んで経済運営を進める産業政策の姿勢が浮かび上がる。

経済の構造改革は自発性が必要

習近平最高指導部は、開幕した全人代や政協で昨年に引き続き、供給側構造改革や国有企業の改革、一帯一路の推進を主なテーマに掲げる。

この1年を振り返ってみると、石炭や鉄鋼などの生産能力の過剰な状態は改善して市場価格は上昇した。一部の国有企業に民営企業が出資する枠組みが実現し、天然ガスへの転換が進んだことで大気汚染に苦しむ北京市で青空が増えた。

ただ、中国メディアによると、中国共産党幹部の養成学校である中国共産党中央党校の郭強教授は「現在の改革は、インセンティブ・メカニズムや個別の問題が全体に大きな影響を与えない仕組みが、まだ完全に確立しておらず、改革を推進する雰囲気がまだ完全に形成されていない」と指摘する。

習最高指導部は「1強」による強権をテコに、国内経済の構造問題の解決を進めているが、これから中国経済が「量」から「質」への転換を実現していくためには、イノベーションが欠かせなくなる。

「上」からの指導だけでなく、「下」からの改革が自発的に推進される経済社会の醸成が求められる。

(北京=多部田俊輔)

[日経産業新聞 2018年3月6日付]

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