軸なきクールジャパン 再起動 トップにSME北川氏

2018/3/2 13:43
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世耕弘成経済産業相は2日の閣議後の記者会見で、官民ファンドの海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)の社長にソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)前最高経営責任者(CEO)の北川直樹氏(64)を起用すると発表した。クールジャパン(CJ)機構の初代社長で松屋出身の太田伸之氏(64)は任期途中で退任する。日本文化の海外展開をめざして発足した機構は戦略の練り直しを迫られている。

北川直樹氏

北川直樹氏

世耕氏は会見で「新経営陣にはどういう戦略で日本の価値を発信していくのか、よく考えてほしい」と述べた。一方でこんな言葉も口にした。「クールジャパンに関する投資は、イメージも非常にばくとしていて大変難しい」

日本のアニメや食などを輸出するという政府のクールジャパン戦略のもと、CJ機構は2013年に発足した。出資金の多くは財政投融資でまかない、日本文化の発信や展開のために多くの案件に出資してきた。具体的にはアジアでの百貨店事業、外食の中東輸出、テレビ番組輸出など。「クールジャパン」を切り口にこうした事業を支援してきたが、苦戦を強いられているものも多い。

財務省は17年11月に開いた財政投融資分科会で、CJ機構の投資実績が当初計画を満たしていないと指摘した。機構は13~16年度に1510億円を投資する計画だったが、実績は310億円で執行率は20.5%にとどまった。経産省や財務省内からCJ機構のあり方を疑問視する声が出始め、産業革新機構との再編論なども浮上しつつある。

経産省幹部は「ファンドの運用成績が多少よくなくても、政策目標が達成されていれば十分。問題は、その政策目標が曖昧なことだ」と指摘する。日本文化の発信、クールジャパンといっても広漠としていて具体的に何に注力し、どうするのかがみえない。

アニメ、食、ファッションなど多岐にわたり、それぞれに製品やサービス、物流などが付随する。何に投資するのか、改めて軸を定め直す必要があるというわけだ。

ではクールジャパンの何に集中するのか。幹部は「韓国の成功例などを参考に、放送など『コンテンツ』の輸出に的を絞るべきだ」と強調する。韓国ではドラマに登場した韓国製の化粧品や家電がアジアで売れるという好循環も生まれた。

日本もアニメや映画といったコンテンツを強力に打ち出し、それを起点に日本製品やインバウンドの増加に結びつけるプロジェクトへの投資が求められる。

今回、機構が起用する北川氏はSMEで音楽事業に長らく携わるなど、コンテンツ分野への造詣が深い。日本レコード協会会長も経験した業界の「大物」。コンテンツをクールジャパンの中心に据えて仕切り直そうとする政府の考えが反映された人事といえそうだ。

ぼやけた政策目標をいま一度、再構築し、かつ投資を成功させることができるか。CJ機構のミッションの前途は多難だ。(経済部 辻隆史)

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