スポティファイが選んだ変わり種上場の利点

2018/3/1 16:34
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音楽配信サービス世界大手のスポティファイは28日、ニューヨーク証券取引所への上場を正式に決め申請書を公開した。米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版によると、上場は早ければ3月最終週で、時価総額は200億ドル(約2兆1000億円)を超える可能性があるという。規模の巨大さもさることながら、注目されるのが、新株を発行せずに既存の株式だけを上場させる直接上場(ダイレクト・リスティング)と呼ぶ手法だ。「資金調達は不要」との宣言にも受け取れる異例の手法にメリットはあるのか。

スポティファイは日本でも人気を集めている

■金融機関への手数料を減らしたい

通常の株式上場では、企業が主幹事の証券会社を決め、その主幹事証券が財務状況や収益性、投資家の需要などを調査して公募・売り出し価格を決める。投資家は上場前にその価格で株式を購入し、市場取引の開始を待つ。成長企業であれば上場後の株価は公開価格を上回ることが多く、一定数の投資家が利益確定の売りに動くことから、結果として市場での株式の流動性が確保される。

スポティファイが、こうした過程を踏まず、直接上場を選んだのはなぜか。最大の理由は上場費用の圧縮だ。スウェーデン生まれの同社がサービスを開始したのは2008年。約10年の社歴だが、広告収入を主軸とした音楽聞き放題のストリーミングというビジネスモデルが当たり、今では世界の月間利用者数が1億5900万人を超える。未公開ベンチャー企業でありながら事業規模は巨大で、一般的な上場では主幹事証券会社などに払う各種手数料が巨額になる。直接上場なら一部の金融機関へのコンサルタント料だけで済む。

目下の赤字体質も見逃せない。スポティファイの17年12月期の売上高は前の期比39%増の40億9000万ユーロ(約5300億円)、最終赤字は12億3500万ユーロ(約1600億円)と前の期の2倍強に拡大した。ネットIT(情報技術)系企業でよくみられる黒字化より成長を優先する施策のためだが、赤字は金融機関や機関投資家の受けが悪く、一般の上場手続きでは審査や手続きに時間がかかることが予想される。直接上場なら、同社のサービスを支持する個人投資家に最短でアプローチできる。

■AIスピーカー参入も

また、スポティファイはこれまで未公開株の割り当てなどで、投資ファンド、ベンチャーキャピタル、一般企業などから多額の資金を調達してきた。こうした「応援団」への配慮から、公募増資による株式の希釈化を避けたいとの判断もあるようだ。

ただ、上場時に避けたからといって、今後ずっと増資を考えないわけではないだろう。スポティファイが米証券取引委員会(SEC)に提出した目論見書のビジネスリスクを説明する項目には、こんな記述がある。「競合のアップル、アマゾン、グーグルは、音楽サービスを包括したデバイスを開発し、また開発を継続している」。昨年から競争が激しくなっているAIスピーカーを念頭に置いた記述で、スポティファイも同じ土俵に上がる可能性があることを暗に示している。資金需要は引き続き旺盛で、直接上場は将来の選択肢を増やすための手段と言えそうだ。

(石塚史人)

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