2019年5月22日(水)

美しい砂浜 浸食からどう守る?(もっと関西)
とことんサーチ

2018/3/1 17:00
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■「養浜」地形・潮流に合わせ

海水浴場が閑散とする冬から春にかけてのシーズンオフ。実は多くの砂浜は夏場に向け、砂浜を維持・整備する「養浜」で忙しい。関西は景観美などで全国的に有名な砂浜が数多く、養浜作業にも様々な工夫を凝らしているという。各地の砂浜を訪ねた。

砂の白さは全国有数。関西随一の砂浜といえば和歌山県白浜町の白良浜だ。海水浴客で混雑する夏場と違い、寒風吹きすさぶ冬の浜に人けは乏しい。そして夏との違いがもう一つ。浜一面に敷かれた防砂ネットだ。

長さ二十数メートルの大きなネットが20以上。「北風で砂が飛散するのを防ぎます。白良浜の砂は粒子が小さく飛散しやすいので」。同町観光課の坂本十志也さんが言う。防砂ネットは1982年から毎冬設置している。

白い砂浜のネットは自然の素材を用いて大地に作品を構築する「ランドアート」を思わせる。それにしても、白良浜の砂はなぜこんなにも白いのか。「実はオーストラリア産の砂なんです」。和歌山県津波堤防整備室長の竹中健二さんが教えてくれた。

本来、砂浜の砂は波や風で減っていくが、河川から新たな砂が供給され一定量を保つ。だが戦後の河川整備で砂の供給が減り、80年代までに砂浜の砂が激減して海岸が浸食する事例が各地で相次いだ。

白良浜も養浜のために人為的な砂の投入を決め、最も砂の質が似ているとして選んだのがオーストラリア産の砂だった。89年から2010年まで、計7万5千立方メートルの砂を投入。「豊富な供給力も決め手でした」と竹中さんは言う。

次に訪れたのが京都府宮津町の天橋立。海に伸びる全長3.6キロの砂州が白砂青松で飾られる。古来、多くの和歌に詠まれ、日本三景の一つとしてあまりに有名だが、やはり80年代までに砂の減少が深刻化した。その対策が全国的にも珍しい「サンドバイパス工法」と呼ばれる養浜作業だった。

近隣の日置地区の堤防などに堆積した砂をしゅんせつし、砂州の北端に投入する。すると、北から南への潮流で自然と砂州全体に砂が行き渡る。砂州の南端に堆積した砂も再度北端へ移す。毎冬4千立方メートルほどの砂を移動する。「天橋立は独特の形状。養浜の方法も独特です」。京都府港湾施設課の井口光広さんは言う。

他に大阪府南部に点在する人工浜でも「必要に応じ適宜砂を投入します」(府阪南港湾事務所)。広大な砂浜が広がる神戸市の須磨海岸は「安全のため昨年までに大量の砂を投入し、遠浅の海に改造しました」(市海岸防災課)という。

■「鳴き砂」琴引浜は手を入れず

美しい砂浜あるところに養浜あり、などと感心していると「いや、うちは何もしていませんけど」という答えに驚いた。京都府の京丹後市観光振興課の小山元孝さんは、同市が誇る琴引浜の養浜について言う。

琴引浜は踏めばキュキュッと音がする「鳴き砂」で有名だ。日本海から荒波が押し寄せる冬の時期、浜の砂は波風にさらわれ激減し、あちこちで岩肌が露出する。だが春になると自然と砂浜は元の姿に戻るのだという。いったいどういうことなのか。

実は琴引浜から600メートルほど沖合の海底は幅1.8キロにわたって深さ20メートルのほどのすり鉢状になっているのだという。冬の間、浜の砂は巨大なすり鉢の中でぐるぐる舞い上がるように巡回し、波が穏やかになる春には浜へと戻る。

この過程で砂は石英以外の不純物が取り除かれる。石英は摩擦係数が高く、砂に多く含まれるほど踏んだ時によく音が鳴る。「下手に砂浜に手を加えると砂は戻ってこないし、鳴らなくなるかもしれない。あえて何もしないことが琴引浜の養浜です」。同市文化財保護課の吉田誠さんは言う。

いやはや、養浜作業は奥が深い。改めて感心することしきり。やがて来る夏の日には美しい砂浜を眺めながら、シーズンオフの養浜作業について思い出してみたい。

(大阪・文化担当 田村広済)

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