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AIに代替される人材とは 研究者が憂慮する未来図

紀伊国屋書店大手町ビル店

入ってすぐの経済書の面陳列棚に3冊並べて展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は、定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。先週は、以前から話題だったトランプ政権の暴露本がようやく発売されたため、売り場がにぎわった。季節需要で株主総会対策本などもよく売れている。そんな中、一時在庫がなくなるほどいい動きを見せたのは、人工知能(AI)の登場によって何が起きるのかを的確に描き出したAI研究者の本だった。

著者は「東ロボくん」のディレクター

その本は新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)。一見してAIの本だとはわかるが、「教科書が読めない子どもたち」がAIとどうして「vs.」で結ばれているのか、それが何を意味するのか。どうしても興味がそそられる。なにしろ著者は「ロボットは東大に入れるか」プロジェクト、通称「東ロボくん」のディレクターを務める数理論理学が専門のAI研究者だ。

不安に駆られてページを開くと、「『AIが神になる?』――なりません。『AIが人類を滅ぼす?』――滅ぼしません。『シンギュラリティが到来する?』――到来しません」と、イメージ先行の悲観論は一刀両断される。それで楽観して読み進めると、「人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫っています」と、安易な楽観論も排除される。両極端の議論を排除して見えてくる現実的な近未来図とはどんなものか。これをファクトを通じて読者に示すことが本書の狙いだ。

AIと今の中高生の不得意なこととは?

示されるファクトは、著者が手がけている2つの研究。ひとつは「東ロボくん」、もうひとつは「vs.」をはさんで対置される「教科書が読めない子どもたち」をめぐる研究、全国読解力調査だ。「東ロボくん」からは、AIの得意なこととできないことが明確にあぶりだされる。

2016年にMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)クラスに合格する実力をつけた「東ロボくん」だが、世界史と数学では高い点が取れても、国語と英語は難関だ。AIはどこまでいっても計算機なので、数式に置き換えられないことはできないのだ。言語の意味や文脈は、とらえられないし、表現できない。だが、数式で置き換えられる仕事は、どんどんAI技術を使って効率化できる。一方、全国読解力調査が明らかにするのは何か。

それは、日本の中高生の読解力が危機的という状況だ。多くの中高生が中学校の教科書の記述を正確に読み取ることができない。意味を理解し、推論を働かせるといったAIの不得意分野は一般的な中高生も不得意なのだ。となると、AIに仕事を奪われるということが現実のものとなる。

著者の未来予想図はこうだ。「企業は人手不足で頭を抱えているのに、社会には失業者があふれている」。AIにはできない仕事ができる人材が不足している状況で、それは日本のみならず世界でそうなると警告している。実際大きな人員削減が発表されている金融界の企業が多い大手町では、他人事ではないだろう。「入荷直後から大きく売れ、先週は在庫切れで売りようがなかった。ようやく入荷してほっとしているところ」とビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。

トランプ政権の暴露本が2位に

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)日本経済の新しい見方会田卓司、榊原可人著(きんざい)
(2)炎と怒り トランプ政権の内幕マイケル・ウォルフ著(早川書房)
(3)戦略参謀の仕事稲田将人著(ダイヤモンド社)
(4)アフター・ビットコイン 中島真志著(新潮社)
(5)中国株二季報 2018年春号DZHフィナンシャルリサーチ編(DZHフィナンシャルリサーチ)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2018年2月19~25日)

1位はまとまった注文が入ってのランクイン。金融界の実務家が日本経済のマクロ分析を試みた1冊だ。2位は、トランプ政権の内幕を描いた話題の暴露本。発売週だったため、注目が高かった。3位は、企業戦略をつかさどる参謀役の考え方や動き方を伝授する本。著者は様々な企業再生に関わってきたマッキンゼー出身の戦略コンサルタントだ。4位は、これまでも何度か紹介してきたブロックチェーン技術のこれからを展望した金融本。コインチェックの流出問題以降、好調な売れ行きが続いている。5位は中国株の企業データブックだ。

(水柿武志)

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