五輪休戦で揺れる韓国 南北融和優先に思い複雑
「民族」傾斜なら文氏に逆風も

2018/2/28 6:49
保存
共有
印刷
その他

25日に閉幕した平昌冬季五輪。北朝鮮が高官代表団や女性応援団の投入で「ほほ笑み」攻勢を仕掛ける一方、受け入れ側の韓国の世論に変化がみられた。若者を中心に「民族愛」で世論をひとまとめにできない実態がある。「五輪休戦」後の文在寅(ムン・ジェイン)政権の南北関係に影響をおよぼす可能性がある。

アイスホッケー女子の1次リーグを3連敗で終えた「コリア」=共同

アイスホッケー女子の1次リーグを3連敗で終えた「コリア」=共同

五輪期間中に会場付近で韓国の若者に聞いた。北朝鮮の核やミサイルを脅威と感じませんか? 五輪ボランティアに参加した女子大生は「核は危ないけど、私たちは家族じゃないですか。会える機会ができてうれしい」と屈託ない。家業を手伝う30代の会社員は「北への批判は政治家が利用しているだけ」とうんざりした様子で語った。

国民の底流には、朝鮮戦争の混乱で南北に生き別れた1千万人といわれる離散家族の存在がある。同じ北朝鮮でも指導部と一般住民を区別しており、北朝鮮全体を脅威の対象とみなしがちな日本人とのズレがある。

「民族愛」を目の当たりにしたのが盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代だ。16~25歳の若年層を対象にした2005年の世論調査では、米国と北朝鮮が戦争した場合、北朝鮮に味方するとの回答が65%に達し、米国側に付くとした28%を大きく上回った。2年後に南北首脳会談が実現する。

会談の準備を仕切ったのが当時、大統領秘書室長だった文氏。05年当時は南北間の交流が盛んで、北朝鮮は南北と日米中ロによる6カ国協議の共同宣言で核放棄を約束した。それから10年以上たち、情勢は大きく変わった。北朝鮮の最高指導者は金正恩(キム・ジョンウン)委員長に代替わりし、米本土を標的とする長距離ミサイルは開発から完成段階へと脅威のレベルが跳ね上がった。

ソウル大統一平和研究院の調査によると、「南北統一が必要」と答えたのは53.8%。この10年間で10ポイント下落した。40代、50代、60代以上が57.8~67%に対し、20代は41.4%、30代は39.6%にとどまる。3代世襲の若い最高権力者に向かう若者の反感はサムスンなど財閥創業家一族への厳しい視線と通じる。

核を放棄しないままでの対北支援に反対する回答が20代は最強硬派の60代以上に次いで高い(韓国ギャラップ調査)。13年ぶりに訪韓した北朝鮮の「美女応援団」も一糸乱れぬ振り付けがむしろ全体主義の印象を与えたのか、野外公演の観客は数百人どまり。「市民の関心がそれほど高くなかったことを裏付けた」とメディアは伝えた。

平昌を舞台に、北朝鮮は対話への「十分な用意がある」と米国に秋波を送った。一方、米側は「非核化」が本格対話の前提と繰り返す。平昌五輪閉幕直前の23日には核開発資金を封じるため「過去最大」(トランプ大統領)の追加の対北独自制裁に踏み切った。

「五輪休戦」をめぐる当面の分かれ道は、3月の平昌パラリンピックを終えた後に予定する米韓合同軍事演習だ。北朝鮮は中止を求めるが、米国は規模縮小や先延ばしに応じるつもりはない。ここで問われるのは、米朝の間で仲介役を演じようとした韓国の対応だ。

北朝鮮は五輪閉会式に対韓最強硬派で知られる金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長を派遣し、南北関係の改善への本気度を印象付けた。南北融和を急ぐ文政権を揺さぶり、米韓分断や「南南葛藤」と呼ばれる韓国内の保守・進歩(革新)の対立をあおる狙いは明らかだ。

文政権の中核は50代前後。学生運動を経験し北朝鮮との融和をめざす傾向が強い。アイスホッケー女子の南北合同チーム結成はその象徴だが、韓国の若者は強く反発した。長年の努力を無視し、政治判断で代表から外される選手に同情した。

南北問題を全てに優先すれば、文大統領は政権誕生の原動力となった若年層から思わぬしっぺ返しを受けかねない。文氏は17日、国内進歩派に強まる南北首脳会談への期待を「性急な気がする」と制した。五輪という夢から覚めた韓国世論の複雑な思いも、朝鮮半島情勢の行方を左右する。

(ソウル=峯岸博)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]