2018年5月28日(月)

「顔が見える」から信頼 NTT西の起業家との協業

スタートアップ
関西
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2018/2/28 6:30
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 NTT西日本がスタートアップ企業との協業を深化させている。キーワードは「自社の見える化」。スピード重視の起業家にとって、大企業との協業は複雑な組織や意思決定の遅さが壁となり、滞ってしまうケースも多い。「お役所的」ともされるNTT西がまず着手したのが、会社の窓口や事業の担当者を見えやすくすることだった。

NTT西日本はスタートアップ企業をサポートする体制を手厚くした(説明会で登壇する中村氏)=大阪市内

NTT西日本はスタートアップ企業をサポートする体制を手厚くした(説明会で登壇する中村氏)=大阪市内

 「この場で顔と名前だけでも覚えていってください」。2017年8月。JR大阪駅前でNTT西が開いた起業家との協業プログラムの説明会。オープンイノベーション推進室室長の中村正敏氏(53)は、参加した起業家にこう呼びかけた。

 プログラムは同社が半年かけて協業する企業を5社選ぶ。説明会は起業家に概要を説明する機会だが、中村氏は多くの時間をプログラムで窓口となる社員や「メンター」と呼ばれる外部の起業家の紹介に割いた。

 プログラムや事務局のホームページも、社員や支援メンバーの「顔」を前面に出すことにこだわる。NTT西が協業で何を狙い、スタートアップに何を提供できるのか。明確に伝えるためだ。

 「相手は人生がかかっている起業家。我々と組んで何が得られるかを示せなければ意味がない」。3年前からプログラムの立ち上げに関わってきた中村氏は話す。そこには過去の反省がある。

 協業プログラム「スタートアップファクトリー」を本格的に始めたのは15年。自前主義からの脱却を掲げて大手企業がこぞってオープンイノべーションに取り組むなか、同社も異業種と組んで事業アイデアを募るイベントなどをこの前後から多く開いていた。中村氏は「正直なところ、当時は大企業の事情で物事を考えていた」と話す。

 せっかく協業先に選んで資金支援しても、実際の協業につながらないこともあった。理由の1つが意思決定の複雑さだ。

 起業家はその場で結論を求め、その日から動き出したい。一方、巨大組織のNTT西は、結論を引き出すのに時間がかかる。社内で「伝言ゲーム」をするうちに結論が持ち越され、立ち消えになることも多かった。

 教育アプリ開発のスタートアップ、キャスタリア(東京・港)は、16年からNTT西との協業にこぎ着けた。しかし山脇智志社長(47)は「スタートアップにとっての1時間は生活がかかっている。大企業の1時間とわけが違う」と言い切る。

 もう1つの理由は、オープンイノベーションを担う組織が社内で孤立しやすいことだ。NTT西もそうだった。組織だけが動いても事業部とうまく連携できない。組織の担当者も変わりやすい。起業家は「窓口となる人は同じ人であってほしい」というのが本音だ。

起業家をサポートする支援役を手厚くした(17年8月に開いた協業プログラムの説明会)

起業家をサポートする支援役を手厚くした(17年8月に開いた協業プログラムの説明会)

 そこで取り組んだのが徹底した見える化だ。オープンイノベーション推進室に経営の意思決定に近い社員が入り、すぐに起業家にフィードバックできる体制にした。社内と起業家の橋渡しもする。協業できそうな事業があれば事業担当者を直接、起業家とつなぐ。「社内の人間をいかに外に引き出せるかも、仕事の1つ」(中村氏)という。

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