勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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世界の頂へ必要なもの 平昌五輪で再認識

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2018/2/28 6:30
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10代で大人のW杯の舞台を踏み、その自信と余裕を携えてU-20(20歳以下)のW杯でチャンピオンになり、その実績をバネに海外のクラブに雄飛し、キャリアを積んで、日本なら大学を卒業したばかりの年齢のころには「W杯? もう2度目なんで、どんな大会かはわかっています」と答えられるようなタレント。そういう人材を輩出しないと、世界の頂にはなかなか近づけないと思うのである。

今回、日本の男子フィギュアスケートは羽生選手が金メダル、20歳の宇野昌磨選手(トヨタ自動車)も初の五輪で銀メダルに輝いた。ディフェンディングチャンピオンの羽生選手がうまく風よけになってくれて、宇野選手は伸び伸びと滑れた面はあるのだろう。

先頭を走る者のつらさは当人にしかわからない。が、羽生選手が経験したことを、いずれ宇野選手も理解する日が来る。そうやって継承されることが「伝統」というものを形づくっていくのだと思う。羽生選手の前には高橋大輔さんが風を受けて走っていた。

小平選手(右)は滑走後、2位になった李相花選手と抱き合って健闘をたたえ合った

小平選手(右)は滑走後、2位になった李相花選手と抱き合って健闘をたたえ合った

羽生選手や宇野選手は平昌で新たな歴史の1ページを開いたけれど、彼らが押し開いた扉の後に続こうとする者も必ず出てくるだろう。ドイツやブラジルのサッカー選手がW杯の代表になれば常に頂点を目指すように、王者の後に続く者は必ず王者を目指す。そういう流れができているフィギュアスケートは本当にすごいと思う。

何ものにも勝るスポーツの価値

フィギュアスケート以外にも今回の冬季五輪は、日本の選手たちが、心震える感動の時間をたっぷり与えてくれた。スピードスケート女子500メートルで優勝した小平奈緒選手(相沢病院)が、3連覇を狙いながら2位に終わった韓国の李相花(イ・サンファ)選手を抱擁し、ともに健闘をたたえ合った場面はメダルよりも価値があったのではないだろうか。同じ競技・種目で長年にわたり、しのぎを削りあってきた者同士にしかわからない心のつながり、リスペクトの精神に涙が出そうになった。

団結すること、結束すること、挫折を乗り越えて力を尽くすことの尊さ、国境や民族や言葉の壁を越えて友情を築くことの美しさ、日本人であることの誇り……。言葉にすれば気恥ずかしいとか、教育的になって説教臭くなってしまうことを、スポーツを通してなら、すんなりと伝えられるし、受け入れられる。そういう感情を育むことができる。それは何ものにも勝る、スポーツの尊い価値ではないだろうか。

平昌冬季五輪の期間中、みんな、どれくらい泣いたことだろう。日本と韓国では時差がないので、体に無理なく、ライブのわくわく感を堪能できた。特にお子さんたちが起きている時間にいろいろな競技がライブで見られたのは本当によかったと思う。世界のアスリートのハイレベルなパフォーマンスは子供たちの心を激しく揺さぶり、火もつけてくれたことだろう。中には「自分もあそこで、あんなことをしたい」と夢や目標にした子供もいるだろうし、スポーツをしなくても「自分も何か頑張れるものを持ちたいな」と思った子もいるだろう。この「やる気の引き出し」はカネには換算できないくらいすごいものだと私は思う。子供の心をわくわくさせ、伸び代をつくる、そんなスポーツの効用や価値について、もっともっと日本人には気づいてもらいたい。

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