黒島結菜 撮るなら料理より「食べ終わったお皿」

「アシガール」「時をかける少女」などのドラマに主演、ボーイッシュな魅力と伸びやかな演技で魅了してきた黒島結菜さん。彼女が「パリ旅行で買ってきた」というユニークな記念品とは? また写真が趣味で、フィルムカメラを愛用している黒島さんが「撮るなら食べ物より食べ終わったお皿」という理由とは?
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ソルボンヌ大学でTシャツを買った理由
「私はカメラが好きなので、旅行に行くと、写真を撮ることがメインになるんです。でも2月に行ったパリ旅行では、なにかモノが欲しいな、という気分になりました。旅の記念になりつつ、日本で着ている人がいなさそうな服が欲しいなって。
買い物をするとき、『ちょっと人と違うものがいいな』と思うんです。だから服もあまり人とかぶらない古着が好きだったりします。
パリでも何がいいか考えていたんですが、そのとき、思いついたのが大学のTシャツ。早速『パリ 大学 Tシャツ』みたいな感じで検索したのですが、ほとんど出てこなかった。だから実際に行ってみたんです、名門のソルボンヌ大学に(笑)。
私はフランス語を話せないので、『おみやげを買いたい』と書いた紙を警備員の人に見せたら、『あっちだ』と教えてくれました。グッズショップには、Tシャツ、パーカー、ノート、USB……いろんなものがありましたね。しかも目当てのTシャツが、安かったんですよ。2枚で5ユーロだから、600~700円くらい。そのうえ、けっこうオシャレで、満足しています。これを着ている日本人は、そうそういないんじゃないかな」
インタビューを始めてすぐにパリでの買い物話が飛び出したが、「以前に比べるとすっかり物欲はなくなった」という黒島さん。「最近は物を買うより、食べ物にお金を使うことが多い」らしい。そんな彼女がハマっているのがそば屋めぐりだ。
「小さいときから、冷たいざるそばやせいろそばが好きだったんです。でも私が育った沖縄には、おそば屋さんがあまりなくて、あっても商業施設のフードコートくらい。だから東京に来て、おそば屋さんに行って、びっくりしました。『そばって、こんなにおいしいんだ!』って。それから、おそば屋さんを調べては、『今日はここに行ってみよう!』と、友達を誘っておそば屋さんをめぐるようになりました」
「好きなのは、やっぱり冷たいせいろそば。毎日食べても飽きないぐらい、好きです。老舗系から新しいそば屋さんまで、ジャンルを問わず、いろいろ行っています。せいろを求めて(笑)。このあいだ行ったところは、つゆじゃなく、塩で食べるおそば屋さんだったんですよ。『まずは塩で食べてみてください』と言われて初めて塩で食べたんですけど、感動しましたね。こんな食べ方もあるんだって」

話したいことは、一度、紙に書く
3月3日公開の主演映画は「プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~」。「月とキャベツ」「花戦さ」などで知られる篠原哲雄監督が、人気少女マンガの実写化に挑んだ意欲作だ。黒島さんは、転校した北海道で恋や友情に悩みながら成長していく女子高生・住友糸真(しま)を演じている。
「高校生だった3年前に、篠原監督の演技ワークショップを受けたことがあるんです。そこからのご縁だし、篠原監督の作品も好きだったので、今回、ご一緒できると聞いたときは、すごくうれしかったです。
篠原監督は、まず、自分でお芝居をして見せてくれるんですよ。今回の糸真もそう。私には、それですごく伝わってくるものがあって。『これを自分なりにうまく表現できればいいな』と考えながら演じていきました。
お芝居をするとき、いつも意識するのは、現場の空気感を大事にすることです。『これをやりたい!』と決め込んで行くのではなく、相手のアクションを受けて、その場で感じたものを出していく。基本的には、一度段取りを決めたら同じお芝居をしなきゃいけないことが多いんですけど、それでも小さいニュアンスを変えたりして、毎回、新鮮でありたいと思っています」

高校生たちの青春を描いた映画「プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~」では、様々な場面でスマートフォン(スマホ)が登場する。スマホで写真を撮って送り合うのはもちろん、思いを伝える大事な言葉もLINEで「送信」する。
「確かにスマホで表現しているところ、多いですね。言われて初めて気づきました(笑)。今思い出すと、手元を撮るカットもけっこうありましたし。やっぱり時代なんですかね。現代ならでは、というか。
私自身は、人とそんなに連絡を取ることが多くないですし、文章で気持ちを伝えるのがすごく苦手だったりするから、なるべく会って、ゆっくり話したいなと思うタイプです。でも口に出してしゃべるのもあんまり得意じゃないから、一回、紙に書きますね。自分の気持ちを紙に書いて、整理してから話すことが多いです」
そんな黒島さんがもしLINEで「好きだ」と告白されたら?
「自分からすることはないですけど、だからこそ、来たらちょっとドキッとするかもしれない(笑)。そういうことが日常じゃないので、逆に感動して、わあーってなるかもしれないです」

写真はキレイじゃないほうが好き
写真が趣味で、フィルムカメラを愛用している黒島さん。インスタグラムで公開している写真も「センスがいい」と評判だ。もし「プリンシパル」の場面を自分で切り取るとしたら、どのシーンがいいのか、聞いてみた。
「みんなで食べているシーンかな。例えば、友達とバーベキューをしたり、家族でジンギスカンを食べている場面。私はご飯そのものじゃなくて、ご飯を食べている人を撮るのが好きなんですよ。口の周りに食べ物がべちょべちょに付いたりしていてもいい。キレイじゃない写真のほうが好きかな、私は。
おそば屋さんに行っても、そばの写真は撮らないんですよ。撮っていた時期もあるんですけど、スマホで撮っても全然おいしそうに見えないし、容量がなくなったら結局消すし(笑)。
撮るなら、食べ物より、むしろ食べ終わった後のお皿。ピザとか食べたら、油や食べかすが付いて、お皿が汚くなるじゃないですか。そっちの写真のほうがリアルだし、ストーリーを感じられるというか。そこにも、みんなとはちょっと違うことをしたいっていう気持ちがあるのかもしれない。実際、そういう写真のほうが残っていますね、スマホに」

1997年生まれ、沖縄県出身。2012年に映画デビュー。16年にドラマ「時をかける少女」、17年は「アシガール」に主演して話題に。18年4月からは「SPEC」シリーズの新作となる配信ドラマ「SICK'S 恕乃抄 ~内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~」に出演。「アシガール」の続編も制作が決定している。その他のドラマに「ごめんね青春!」(14年)。映画に「ストロボ・エッジ」(15年)、「サクラダリセット 前後編」(17年)など。

「プリンシパル ~恋する私はヒロインですか?~」
東京の女子高で仲間外れにされ、札幌の父親のもとで新生活を送ることになった住友糸真。そこで出会ったのは、タイプが正反対のイケメン2人、舘林弦と桜井和央。学校では「弦と和央はみんなのもの」という暗黙のルールがありながらも、糸真は自然と二人と仲良くなってしまう。初めての親友の晴歌はそれをよく思わず……。監督・篠原哲雄 脚本・持地佑季子 原作・「プリンシパル」いくえみ綾(集英社マーガレットコミックス刊) 出演・黒島結菜、小瀧望(ジャニーズWEST)、高杉真宙、川栄李奈 3月3日(土)全国ロードショー
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
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