ANA、22年度までに1.7兆円投資 最新機・AIなど
ANAホールディングス(HD)は23日、次期中期経営戦略期間中の2018年度から22年度までに総投資額が約1兆7000億円になると発表した。その前の5年間に比べ約3割増える。最新の航空機を購入するほか人工知能(AI)やロボット技術の導入、人材育成の拠点設立に投資する。業務の効率化や少子化で懸念される人手不足に対応する。
同日に記者会見を開いたANAHDの片野坂真哉社長が「航空機の購入はもとより、先端技術の導入などへ戦略的な投資を進めていく」と今後の投資方針について語った。1日に公表した新たな中期経営戦略では国際線の路線ネットワーク拡大や先端技術の導入を戦略の柱と位置付けており、大型投資に踏み切る。
18年度は総額3900億円の投資を計画するほか、19~22年度も同3100億~3550億円規模の投資を見込む。17年度見通しの3530億円を除き、直近は各年度とも3000億円未満だった。今後は積極投資を維持していく。
競合の日本航空が17年に策定した中期経営計画では18~20年度の3年平均の投資額は2200億円程度。日航は公的資金を受けて再建した経緯から17年春まで国によって投資などに制限があった。ANAHDは日航を上回る水準の投資を続けて、輸送能力やサービスで差を付けたい考え。
国際線の路線ネットワーク拡大や競争力向上に向けて航空機関連で各年度とも2000億円前後を投資する。エアバスの大型旅客機A380の導入が控えるほか、貨物事業でも日本―北米間の需要を取り込むため大型貨物専用機として米ボーイングの777を導入する見通しだ。
新機材の導入を進めながら、「欧州エリアへの供給量が少ないとの指摘を受けているため強化していきたい」(全日本空輸の平子裕志社長)と路線拡大に意欲を示した。
先端技術への投資を積極的に進める。片野坂社長は「自動翻訳機や負担を軽減するロボット型スーツの活用などで競争力と従業員の働きやすさを向上させたい」と話した。コールセンターでの応対を補助するAIの導入や空港内での自動運転車の導入なども検討しているという。パイロットや客室乗務員の育成強化にむけた施設「総合トレーニングセンター」も建設する。
課題は大型投資に見合った利益の確保だ。最終年度である22年度の目標で売上高は17年度見通し比27%増の2兆4500億円、営業利益は同38%増の2200億円だ。ただ営業利益率は9%で、前回の中計で掲げていた20年度目標9.3%を下回っている。
片野坂社長は「まず営業利益2000億円を20年度までに達成する。前回公表していた計画よりペースは落ちているものの、22年度に向けて成長は維持すると理解してほしい」と語った。
競合の日航も赤坂祐二新社長をはじめとした新体制の発足を控え、2月中に20年度までの中期経営計画のローリング版で強化策を打ち出す見通し。大手2社による競争の激化と戦略の違いが明確になりそうだ。