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バス、収益路線参入に抗議 両備「赤字路線維持できぬ」

列島追跡

岡山県を中心にバス事業などを展開する両備グループ(岡山市)が、赤字のバス事業をどう維持するのか異例の手法で問題提起をした。同社の黒字路線に競合する形で新規参入する事業者への認可を巡り、抗議の意味で自社の赤字路線の廃止届を提出。小嶋光信代表は「地域公共交通の窮状を広く理解してほしい」と述べている。

西大寺に向かう両備バスの車両と「めぐりん」の停留所(21日、岡山市)

猫の駅長が話題となった和歌山電鉄貴志川線など、各地のバス・鉄道の再生仕掛け人として知られる小嶋代表が記者会見を開いたのは今月8日。傘下のバス会社が運行する路線の約4割について運輸局へ廃止申請を出し、今年9月末と来年3月末に順を追って廃止するという内容だ。

岡山市内を「試走中」のめぐりん(16日)

1日5000人以上の足に影響する廃止届提出を決断させたのが、タクシー事業の八晃運輸(岡山市)が運行する循環バス「めぐりん」の新路線。12年に市中心部に新規参入した事業者で、17年3月、岡山駅と市東部の西大寺地区を低価格で結ぶ新路線を申請した。

同路線は両備が繁忙時には5分間隔で運行するドル箱路線。西大寺が発祥で「108年間、沿線開発をしてきた伝統的路線」(小嶋代表)でもある。全体の3~4割しか黒字路線がない同社は「ここを取られると他の赤字路線が維持できなくなる」(同)という。

記者会見では抗議の意味で廃止届を提出したことを公表し、国や自治体、住民らを交えた協議会設置を訴えた。しかしその夜、運輸局はめぐりんに認可を出した。運賃は市中心部が100円など両備より3~5割安く、両備は年間3億円近い減収になるという。

2002年の道路運送法改正で、バス事業者の数を制限する需給調整は廃止され、新規開設や撤退も免許制から許可制へと変更された。競争原理が持ち込まれたわけで、今回も利用者には安価な運賃で便数が増えるメリットがある。

ただ、赤字路線をどう維持するかという問題は残る。両備も撤退は自由だが、「地域の交通網を守らないと地方創生などあり得ないという信念でやっている」(小嶋代表)と強調。記者会見では「廃止するために廃止届を出したわけではない」とし、新路線が認可されなければ、廃止届を取り下げると話していた。

両備が再生を手掛けた多くは行政が施設などを負担し、運行を民間が受託する形態で、自治体の関与は不可欠だ。岡山大学大学院の阿部宏史教授(交通計画学)は「人が増えている時代なら良いが、現在、公共交通が競争原理で成り立つのか」と指摘する。

全国的には地域協議会の検討を経て認可の判断がなされるケースがほとんどだが、岡山では「再三要求したものの、一度も開かれなかった」(小嶋代表)という。岡山市の大森雅夫市長は、早ければ3月中にもバス事業者と市が協議する場を設ける考えを示したが、八晃運輸は「計画していた17年10月の運行が遅れており、認可を機に準備を進めていきたい」と話す。市内では既にめぐりんが新路線を試走中だ。

(岡山支局長 上野正芳)

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