2018年12月10日(月)

中国、顔認証技術大国の光と闇 13億人を特定
VentureBeat

コラム(テクノロジー)
科学&新技術
(2/2ページ)
2018/2/25 6:30
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<Face++>

米マサチューセッツ工科大学(MIT)が選ぶ「世界で最もスマートな50社」の11位に入ったFace++は、顔認証に人工知能(AI)を採用したおそらく初のスタートアップだ。企業評価額は10億ドルに上る。

Face++のソフトウエアでは83のデータポイントを使って顔をトレースする。この技術は既に電子決済サービス「アリペイ(支付宝)」や配車サービス最大手の滴滴出行などの人気アプリに採用されている。例えば、滴滴出行の乗客はこのソフトウエアを使い、運転席にいる人物が身元の確かな運転手であることを確認できる。

<センスタイム>

警察はセンスタイムの顔認証を活用し、中国南東部で1カ月間に69人の容疑者を逮捕した。同社は中国政府とのビジネス関係を強化しつつある上に、膨大な市民のデータセットを保有しているため、プライバシーに対する懸念が高まっている。例えば、同社の技術を使えば、顔画像付きの10億人規模のデータベースで対象人物の足取りをたどったり、様々な時間や場所、対象者を自由自在に監視したりできる。

■顔認証技術のメリット

精度の高い顔認証アルゴリズムにはディープラーニングが使われているため、このシステムを学習させる大量のデータが必要になる。中国は17年、13億人の国民を数秒で特定できる巨大な顔認証データベースを構築した。90%の精度を達成するのが目標だ。

この巨大なデータベースや、国が多くの企業と手を組んでいるといった理由から、セキュリティー機器市場に占める中国の割合は一段と高まっている。英調査会社IHSマークイットがまとめた「セキュリティー機器・サービスリポート」によると、21年には中国市場の規模は世界全体の38%に及ぶ。これは北米と西欧市場の合計よりも大きい。

■顔認証技術の限界

顔認証は中国の犯罪対策で効果を上げ、治安維持に貢献しているが、限界も多くある。その一例は人権問題だ。国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、新疆ウイグル自治区の住民に虹彩スキャンと指紋が義務付けられたのを受けて異議を唱えた。中国政府がこの情報を使って異議申立人や人権活動家を「取り締まる」のではないかとも懸念されている。

さらに、顔認証に頼りすぎるとデータがハッキングされてデリケートな情報が漏えいし、セキュリティーやプライバシーが侵害される事態を招く恐れがある。顔の検出が少しでも不正確なら、誤認逮捕にもつながりかねない。

中国の顔認証への依存に対するもう一つの懸念は、この技術によって差別が生じる可能性だ。香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは最近、顔認証を導入している一部のレストランが、機械がランク付けした顧客の外見に基づいて食事代を割引したと報じた。つまり、外見が「美しい」客は高得点をもらい、機械に鼻が大きすぎるか小さすぎると判断された人よりも安い価格で食事できるというわけだ。

顔認証は明らかに中国のビジネス手法や犯罪対策を変えつつある。しかし、研究者らはマイナスの影響を最小限にとどめ、プラスの効果を最大化するために、100%の正確さを目指して努力し続けなくてはならない。

By Deena Zaidi=金融サイトを中心に活動する米シアトル在住のライター

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

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