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中国、顔認証技術大国の光と闇 13億人を特定

VentureBeat

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中国では春節(旧正月)が近づくと、顔認証メガネをかけた警察官が目につくようになる。この眼鏡をかければ、身元をすぐに確認し、祝賀行事などで犯罪を取り締まることができるからだ。だが興味深いことに、こうした顔認証技術は中国の人にとって目新しいわけではない。

(C)iStock/gece33

中国では既に身分証明証を使わない本人確認が浸透している。中国の電子商取引大手アリババ集団関連会社のアント・フィナンシャルが始めた「スマイル・トゥー・ペイ」では、カメラに自分の笑顔を映して電子決済の認証を受ける。中国では顔認証により、IDカードを使わなくても簡単に学生が大学の講堂に入ったり、旅行者が飛行機に搭乗したり、社員がオフィスに入ったりできる。

中国公安部は2015年、顔認証システムと監視カメラを使って「いつでもどこでも、完全にインターネットに接続し、完全にコントロールされた」ネットワークの実現を目指す方針を明らかにした。これを受けて、中国の民間企業や顔認証分野のスタートアップは不正行為や犯罪行為を監視するために、政府と積極的に手を組んでいる。

顔認証分野の有力企業

中国の市民に目を光らせておくために、既に顔認証技術を採り入れている主な中国企業は以下の通りだ。

<ダーファテクノロジー>

ダーファテクノロジーの顔認証システムは16年、顔認証評価システム「LFW」の精度試験で中国のインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)や同ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)、米グーグルの記録を破り、新記録を達成した。ダーファの顔認証システムで使われているディープラーニング(深層学習)は100以上の層で構成されており、既存の顔認証システムで最も多い。これにより新たなタイプの計量学習を使い、北京の人混みで容疑者を見つけたり、福建省で信号待ちをしている歩行者でさえ監視したりできるようになった。ダーファによると、同社のテクノロジーを使い、20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)開催中に多くの逃亡犯が逮捕された。

<杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)>

監視カメラ世界最大手と称している杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)は、顔モデリングと類似度計算をシステムに搭載することで、顔認証を実現した。このシステムを使えば犯罪者をブラックリストに載せたり、競技場や公園、カジノのような場所にブラックリスト掲載者が入らないようにしたりできる。

ハイクビジョンの顔認証技術は97万3661人の顔画像のデータベースから5人の容疑者を抽出し、逮捕に貢献したとされる。

<Face++>

米マサチューセッツ工科大学(MIT)が選ぶ「世界で最もスマートな50社」の11位に入ったFace++は、顔認証に人工知能(AI)を採用したおそらく初のスタートアップだ。企業評価額は10億ドルに上る。

Face++のソフトウエアでは83のデータポイントを使って顔をトレースする。この技術は既に電子決済サービス「アリペイ(支付宝)」や配車サービス最大手の滴滴出行などの人気アプリに採用されている。例えば、滴滴出行の乗客はこのソフトウエアを使い、運転席にいる人物が身元の確かな運転手であることを確認できる。

<センスタイム>

警察はセンスタイムの顔認証を活用し、中国南東部で1カ月間に69人の容疑者を逮捕した。同社は中国政府とのビジネス関係を強化しつつある上に、膨大な市民のデータセットを保有しているため、プライバシーに対する懸念が高まっている。例えば、同社の技術を使えば、顔画像付きの10億人規模のデータベースで対象人物の足取りをたどったり、様々な時間や場所、対象者を自由自在に監視したりできる。

顔認証技術のメリット

精度の高い顔認証アルゴリズムにはディープラーニングが使われているため、このシステムを学習させる大量のデータが必要になる。中国は17年、13億人の国民を数秒で特定できる巨大な顔認証データベースを構築した。90%の精度を達成するのが目標だ。

この巨大なデータベースや、国が多くの企業と手を組んでいるといった理由から、セキュリティー機器市場に占める中国の割合は一段と高まっている。英調査会社IHSマークイットがまとめた「セキュリティー機器・サービスリポート」によると、21年には中国市場の規模は世界全体の38%に及ぶ。これは北米と西欧市場の合計よりも大きい。

顔認証技術の限界

顔認証は中国の犯罪対策で効果を上げ、治安維持に貢献しているが、限界も多くある。その一例は人権問題だ。国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、新疆ウイグル自治区の住民に虹彩スキャンと指紋が義務付けられたのを受けて異議を唱えた。中国政府がこの情報を使って異議申立人や人権活動家を「取り締まる」のではないかとも懸念されている。

さらに、顔認証に頼りすぎるとデータがハッキングされてデリケートな情報が漏えいし、セキュリティーやプライバシーが侵害される事態を招く恐れがある。顔の検出が少しでも不正確なら、誤認逮捕にもつながりかねない。

中国の顔認証への依存に対するもう一つの懸念は、この技術によって差別が生じる可能性だ。香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは最近、顔認証を導入している一部のレストランが、機械がランク付けした顧客の外見に基づいて食事代を割引したと報じた。つまり、外見が「美しい」客は高得点をもらい、機械に鼻が大きすぎるか小さすぎると判断された人よりも安い価格で食事できるというわけだ。

顔認証は明らかに中国のビジネス手法や犯罪対策を変えつつある。しかし、研究者らはマイナスの影響を最小限にとどめ、プラスの効果を最大化するために、100%の正確さを目指して努力し続けなくてはならない。

By Deena Zaidi=金融サイトを中心に活動する米シアトル在住のライター

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

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