2018年のIPO始まる メルカリなど11年ぶり100社も
2018年の新規株式公開(IPO)が23日始まった。上場主幹事のシェアで7割超を占める大手証券4社の予想をまとめたところ、通年のIPO社数は「90~100社程度」(野村証券の倉本敬治公開引受部長)に集中した。金融危機前の07年(121社)に次ぐ水準になる可能性がある。上場で知名度を上げ、優秀な人材の獲得を狙う企業が多く、IT(情報技術)やサービス関連企業などが準備を進めている。
今年の第1号となったのは業務用食材などの電子商取引(EC)サイトを運営するMマートだ。23日に東証マザーズに上場し、上場初日は買い気配のまま取引が成立しなかった。気配値は公募・売り出し価格(公開価格、1240円)の2.3倍となる2852円まで上昇した。
「今年のIPOのテーマは『T・M・T』だ」。大和証券の松下健哉公開引受部長はテクノロジー、メディア、通信の3分野で新規上場が相次ぐとみる。
企業名 | 事業概要 |
ソフトバンク | ソフトバンクグループの携帯事業子会社 |
メルカリ | フリーマーケットアプリ大手 |
freee | 中小企業向けのクラウド会計ソフト |
スマートニュース | スマホ向けのニュース配信アプリ |
ビズリーチ | 人材紹介サービス |
今年最大の案件となりそうなのがソフトバンクグループの携帯事業子会社「ソフトバンク」だ。東証1部に上場し、3割程度の株式を売り出すとみられる。資金調達額は2兆円規模になる可能性がある。この金額は17年のIPOで調達した金額の3倍を超え、1987年に約2兆2000億円を調達したNTTに匹敵する。
知名度の高い企業ではフリーマーケットアプリのメルカリ(東京・港)が今年6月に上場する見通しだ。上場時の時価総額は2000億円超と、ベンチャーとしては大型の上場になるとの期待もある。
IT系の有力候補は多い。市場関係者の間ではクラウド会計ソフトのfreee(東京・品川)やニュースアプリのスマートニュース(東京・渋谷)、クラウドソーシング大手のランサーズ(同)などが有力とされる。
サービス関連では人材紹介のビズリーチ(同)やバス会社の平成エンタープライズ(埼玉県富士見市)などの名前が挙がる。3月23日にはヘアカット専門店「QBハウス」を運営するキュービーネットホールディングス(東京・渋谷)が東証1部または2部に上場する予定だ。
国内のIPO社数は00年代前半から半ばにかけて100社超が続いたが、08年のリーマン・ショックで失速した。その後はじわじわと回復基調にある。人手不足を背景に「上場で知名度を高め、人材獲得を狙う企業が多い」(SMBC日興証券の河内一宏公開引受部長)という。大企業が相次ぎベンチャーキャピタルを立ち上げるなど、この数年でベンチャー企業が支援を受ける環境が充実した結果、上場を視野に入れる企業が増えた面もありそうだ。
市場環境は今のところ悪くはない。ベンチャー企業の多くが上場する新興企業向け市場では、日経ジャスダック平均株価が1月26日に過去最高値をつけた。2月23日時点で日経平均株価が年初から4%下げたのに対し、日経ジャスダック平均株価は4%高だ。17年は上場した90社のうち9割超が、上場後についた最初の株価である初値が公開価格を上回った。みずほ証券の山岸洋一公開引受部長は「イノベーション(技術革新)で既存ビジネスを変革する企業が注目されやすい」と話す。
一方で東証は、上場直後に業績予想を大幅に下方修正する企業が相次いだ反省から、上場時の業績見通しは厳密な根拠を求めている。監査法人の会計士も不足しているとされ、IPO社数が100社を大幅に超えるのは難しいと見る向きが多い。
(阿部真也、星正道)
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