2019年6月17日(月)

球場が呼んでいる(田尾安志)

フォローする

選手の大敵「イップス」に打ち勝つには

(2/2ページ)
2018/2/25 6:30
保存
共有
印刷
その他

胃が痛くなることもなかった。勝率が5割程度はいくチームを預かり、自身の采配で負けた試合がいくつも出てくれば胃が痛くもなるだろうが、当時の楽天は選手を寄せ集めて何とかこしらえたチーム。他球団より明らかに力が劣っていて、「早く胃が痛くなるようなゲームがしたいな」と思うほどだった。

厳しい言葉は期待の裏返し

石川にはこうと決めた道を突き進む強さがある=共同

石川にはこうと決めた道を突き進む強さがある=共同

胃痛と無縁だったのは、私が他人にどう見られるかを気にかけない性格もあったからだろう。負けが続いて他人に何をいわれようが、全く気にならなかった。そんな話を高妻先生にしたら「そういう人、意外と少ないんです」。現役時代にイップスとも無縁だった私が思うに、日本人は何かと他人の目を気にしすぎるきらいがあるのではないか。ただ、それでは何をしても楽しく思えないはずだ。

阪神のある若手が「阪神ファンの応援は95%くらいがヤジです」と苦笑交じりに話したことがある。聞いていて寂しい思いがした。お客さんがヤジを飛ばすのは、それだけ応援したい思いがあるから。そういうファン心理を理解せず、味方であるファンをあたかも敵のように感じているとしたら筋違いもいいところだ。この若手にしても藤浪にしても「厳しい言葉は期待の裏返しなんだ」と思うだけで、メンタルの問題はほとんど解消されるはず。ヤジも給料のうちなのだ。

藤浪とともに気になる選手にヤクルトの石川雅規がいる。2桁勝利を11度もマークしたエースが、昨季は4勝14敗に終わった。

先ごろ、親交のある歌手のさだまさしさんから電話があった。大のヤクルトファンのさださんがヤクルト投手陣と食事をした際、石川がこんな話をしたという。「プロ野球で一番すごいナックルボールを投げたのは田尾さんです」。確かに、私はナックルを投げたことがある。中日にいたころ、米大リーグでナックルボーラーとして活躍していたフィル・ニークロが来日し、教えにきた。投手陣が誰一人としてナックルをマスターできなかった中、唯一それらしい球を投げたのが外野手の私だった。

さださんに「石川がナックルを教えてほしいと言っているんだけれど、教えてあげてくれる?」と言われて快諾。沖縄のヤクルトキャンプで手ほどきさせてもらった。感心したのはその向上心だ。昨季4勝にとどまり、何かを変えなければという思いが強いのだろうが、常勝チームとはいえないヤクルトで156勝を挙げ、38歳になった投手が、プロでは1球も投げていない私に教わろうというのだ。実績にあぐらをかかず、変なプライドも持たずに、さらに上達したい一心で必死に取り組む。この姿勢が身長167センチの小さな大エースを支えてきたのだなと思った。

4年ぶりに指揮を執ることになった小川淳司監督が言っていた。「うちには小川泰弘もいるけれど、石川の野球に対する姿勢を見ていると、彼を開幕投手にしたくなりますね」。誰にどう見られようが、何を言われようが、こうと決めた道を突き進む強さが石川にはある。素直で強靱(きょうじん)な心を持つ彼なら、厳しいヤジをも糧に復活を遂げるに違いない。

(野球評論家 田尾安志)

球場が呼んでいる(田尾安志)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

  • 前へ
  • 1
  • 2
保存
共有
印刷
その他

プロ野球コラム

17年ドラフト会議

電子版トップスポーツトップ

球場が呼んでいる(田尾安志) 一覧

フォローする
2月のキャンプで右肩を故障して以降、初めて打撃投手を務める松坂=共同共同

 中日の松坂大輔が渦中の人になっている。右肩痛からの復帰を目指すさなか、チームの練習日にリハビリ先の千葉でゴルフをしていたことが問題視され、球団から処分が科された。球団による選手の管理に関わってくる話 …続き (5/26)

日本ハム・金子は4月6日の西武戦で「第2先発」として三回から登板も2回5失点だった=共同共同

 指名打者(DH)制やリクエスト制度など、日本のプロ野球が米大リーグから導入した仕組みは多い。本家にならう慣例は今も続いていて、今季また一つ、新たな取り組みが日本に取り入れられた。「オープナー」だ。
  …続き (4/28)

ソフトバンク・内川も36歳。現状に合ったスイングへと懸命に変えようとしている=共同共同

 ベテランにもなると打撃フォームや投球スタイルを変えるのは勇気が要る。実績を残してきた人なら、なおさら過去の成功を否定するようなまねはしたがらない。ただ、選手寿命を延ばす意味でも、体の変化に応じて動き …続き (3/26)

ハイライト・スポーツ

[PR]