兵庫のお好み焼きに独自色なぜ(もっと関西)
とことんサーチ

2018/2/22 17:00
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お好み焼きと言えば、大阪と広島がしのぎを削っていると思われがちだが、兵庫も負けていない。大阪の隣にありながら、お好み焼きが生地と具をあらかじめ混ぜる「混ぜ焼き」に集約されず、「重ね焼き」や具材など独自色を残している。なぜ兵庫の粉ものは独自性を保つのだろうか。

神戸市のお好み焼き店には昔ながらの作り方が残る(長田区のみずはら)

神戸市のお好み焼き店には昔ながらの作り方が残る(長田区のみずはら)

■小規模店が身近な味育む

鉄板に薄く生地を伸ばし、キャベツや肉、天かすを重ね、上から生地をかけてソースのみで味付けする。マヨネーズや青ノリ、かつお節は使わない――。お好み焼き店がひしめく神戸市長田区の中でも有数の老舗、「みずはら」はお好み焼きでも重ね焼き、と呼ばれる焼き方を貫く。

現在の店主、水原弘二さんの祖母、ジユさんが1933年に創業した。店内には鉄板1枚、客は7人で満席だ。「長田には自宅の1階を改装して、駄菓子なども扱う小規模な店が多かった」と水原さん。創業当時の野菜はキャベツでなく、ネギを使用、名称もお好み焼きではなく「にくてん」として販売していた。

みずはらの焼き方のように、お好み焼きは関西でも、かつては重ね焼きが多かった。お好み焼きに近い料理は大阪や京都では「一銭洋食」、兵庫ではにくてんと呼ばれており、いずれも重ね焼きだった。

■大阪では「混ぜ焼き」人気

この状況に変化が生じるのは、戦前あたりからとされる。日本コナモン協会(大阪市)の熊谷真菜会長は「花街において個室で男女が密会するために、店が具材を用意して客に調理を任せられる手法として、混ぜ焼きが提供された」と話す。今では全国チェーン店を含めて多くのお好み焼き店が混ぜ焼きを採用する。

一方で、神戸では重ね焼きの店が多く残っている。背景について言われるのが、個人経営の小規模店の多さだ。「兵庫は広島と同様に自宅を改装して主婦が営む店が多い。商売色の強い混ぜ焼きは広がらなかったのではないか」(熊谷会長)との見方だ。

2014年の経済センサスによると、人口1千人あたりのお好み焼き、焼きそば、たこ焼き店数は兵庫県は広島県に続き全国2位で、大阪府の3位を上回る。

高砂では神戸よりも、さらに独自色を行く。まず、お好み焼きを現在でもにくてん、と呼ぶ場合が多い。調理法も重ね焼きはもちろん、具材にキャベツなどのほか、ジャガイモやこんにゃく、牛すじも使う。にくてんは高砂のご当地グルメとしても有名だ。

高砂のお好み焼きの独自性について、にくてんを提供する店で構成する「にくてん喰わん会(現高砂にくてんの会)」の島本邦夫前会長は「おでんの具を入れたのが発祥で、自宅や駄菓子屋で食べるものだったから」と説明する。島本さんによると、高砂市でお好み焼きという言葉を聞くようになったのは1970年ごろと他地域に比べ遅かった。家庭の身近な味だからこそ名称と、具材も独自のものが残ったという。

小規模店や家庭の味以外にも、兵庫が独自のお好み焼き文化を保つのは、港町が底流にあるとの見方もある。オリバーソース(神戸市)の段林洋一氏によると「造船業が盛んな神戸では、造船、機械金属などの下請け工場が多く、鉄板が手に入りやすい環境だった」と話す。段林氏は長田出身で、自宅には近隣の工場が作ったお好み焼き用の鉄板があったという。

食文化を研究する武庫川女子大学の三宅正弘准教授は「海の玄関口だった神戸は、食文化も含めて明治以降の文化面での成長が大きかった」と話す。大阪の近くにありながら簡単には大阪の影響に屈しない兵庫の文化は、お好み焼きにも反映されている。

(大阪経済部 大淵将一)

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