郵船や川崎汽船にEU制裁金 車輸送カルテル520億円

【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は21日、日本郵船と川崎汽船、商船三井の日本企業3社を含む海運5社が自動車の輸送でカルテル行為をしていたと認定した。調査に協力したとして制裁金を免除された商船三井を除く4社に、合計で約3億9500万ユーロ(約520億円)の制裁金を科した。
欧州委がカルテル行為を認定したのは日本3社のほか、南米のCSAV、北欧のWWL-EUKORの計5社。2006年から12年にかけての6年間、乗用車やトラックなどを運ぶ大型貨物船の欧州と北米、アジアなどを結ぶ航路で輸送費を操作していたという。
欧州委によると、輸出のために海上輸送で欧州を出入りする自動車は16年の1年間で約1000万台。このうち約半数を5社が輸送したという。多くの自動車の海上輸送を巡ってカルテルが日常化していたことを浮き彫りにした。
EUで競争政策を担当するベステアー欧州委員は21日記者会見し、「競争の代わりに共謀して利益を高めようとする企業がいる限り、調査の手は緩めない」と強調した。日本郵船には1億4182万ユーロ、川崎汽船は3910万ユーロの制裁金の支払いを命じた。
欧州委は商船三井からの告発を受けて調査を開始。日米当局などと連携して企業への立ち入り調査などを進めてきた。
日本郵船は欧州委による制裁金の支払い命令を見越し、約196億円の引当金を計上済みで「18年3月期決算への影響は軽微とみている」(広報グループ)と説明した。川崎汽船は「決算への影響は確認中」(IR・広報グループ)としている。
自動車輸送船の価格カルテルを巡っては、12年の発覚以降、日本の公正取引委員会や米司法当局も両社に制裁金を課している。日本郵船は日本で約131億円、米国で約70億円を支払った。川崎汽船も日本で約57億円、米国でも約74億円の支払いに応じている。