2018年9月24日(月)

自動車が電車になる日
WAVE(宮田拓弥氏)

コラム(ビジネス)
AI
自動運転
2018/2/28 12:07
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 年が明けて間もなく、ラスベガスで世界最大級の最新技術の見本市CESが開催された。過去10年間CESの主役であったスマートフォン(スマホ)やテレビなどの家電に取って代わり、ここ数年大きな注目を集めているのが自動車だ。

スクラムベンチャーズ代表
日本と米国でスタートアップを複数起業後、ミクシィ・アメリカの最高経営責任者(CEO)を経て、2013年にスクラムベンチャーズを創業。50社超の米国のスタートアップに投資。

 モーターショーのように自動車の最新モデルが展示されているのではなく、インターネットにつながった「コネクテッドカー」、人工知能(AI)により実現しつつある自動運転車など、世界中の自動車メーカーがそれぞれの「未来のクルマ」像を提示している。

 今年、ひときわ面白い発表をしたのが日本メーカーの雄、トヨタ自動車だ。

 トヨタが発表したのは「e―Palette」というコンセプト。全面大きなスクリーンで囲まれた車体をベースに、スマホのように起動するアプリケーションで、車の機能自体を変えることができる「プラットフォーム」にしようという全く新しいアプローチだ。一台の車がライドシェア、ピザ店、オフィス、洋服店とニーズや状況に応じてどんどん形を変えていくことができる新しい世界観を提案している。

 毎日、車のテレビCMが放送されているが、そのほとんどはインターネット時代、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の視点からすると、いささか時代遅れなものばかりだ。ログインもできず、新しいアプリを追加したり、パーソナライズをしたりすることもできない。購入した後も新しいアプリの追加で魅力が増していくスマホとは異なり、買った瞬間が頂点で後は変化もなく、その価値は下がっていく。

 一方、今回トヨタが提示したコンセプトは、IoT時代の新しい車の形だ。ただし、トヨタや自動車産業にとってもろ刃の剣とも言える。

 現在、多くの自動車は週末や通勤時のみに使われるため、ほとんどの時間は駐車場に止まっている、稼働率が非常に低い(数%)ハードウエアだ。「e―Palette」のような世界が広がっていくと、一台の車が多様な用途で使われることで稼働率は一気に上がり、世界全体で必要とされる自動車の台数が減っていく。自動車メーカーにとっては大きなリスクにもなり得るが、時代の流れを読み、あえてこうしたプラットフォーム戦略に切り替えていく宣言をしたのだろう。

 筆者は最近、「自動車は近い将来電車になる」と言っている。

 電車のメーカーは日立製作所川崎重工業だが、利用者は電車に乗るときに「日立に乗る」とは言わず、「JRに乗る」と言う。一方の自動車はこれまで「トヨタの車に乗る」と考えられていた。今後、ライドシェア、自動運転などが進み、「e―Palette」のような世界観が広がっていくことで、電車と同じように「(自動車サービス)に乗る」となるはずだ。

 スマホ、IoTの世界で大きな利益を生み出しているのは、米グーグル、米アップルのようなプラットフォーム、米アマゾン・ドット・コム、米フェイスブックのようなサービスプロバイダーだ。これまでハードウエアとしての自動車を販売して大きな利益を生み出してきた自動車産業が、「電車化する自動車」の時代にどのように生まれ変わっていけるのか、注目だ。

[日経産業新聞 2018年2月22日付]

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