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今日も走ろう(鏑木毅)

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友を求め世界へ飛び出そう 自身の殻を破り交流を

2018/2/22 6:30
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野山を走るトレイルランニングの世界に不世出の伝説的アスリートがいる。カリフォルニア州のシエラネバダ山脈を160キロメートル(100マイル)駆け抜けるウエスタンステイツという世界で最も伝統ある大会を7連覇したスコット・ジュレクだ。彼とは何度となく同じレースに出て親交を深めてきた。そして以前問いかけたことがある。

「闘い続けるモチベーションはどこにあるのか」

きっと彼は「自分が世界一強いことを証明したい」と言うのだろうと予想していた。ところが返ってきたのは意外な言葉だった。

「僕は世界中に友人をつくりたいから闘い続けるんだ」

伝説的ランナー、スコット・ジュレク(右)も友に

伝説的ランナー、スコット・ジュレク(右)も友に

世界をリードするトップアスリートの発する言葉としては驚くべきものと思われた。当時、国内トップとなり世界に駆け出したばかりの自分にとっては極めて新鮮に感じられ、わくわくするような足元の感覚にとらわれたものだ。

日本の中でトップレベルになるのなら一意専心、自身の殻に閉じこもりながらも競争相手を意識し、がむしゃらに努力を続ければ高みに立てそうな気はする。ただ、そこから枠を超えて世界を舞台に活躍するのならスコットの言葉のように競争を超越した思いが必要になると思う。

競技スポーツで世界に打って出るにはさまざまな壁がある。四方を海に囲まれた日本ならこれまでは文化や言葉の壁が高く立ちはだかった。闘いも自身の殻に閉じこもりがちで、そうしているうちは壁さえ意識することができないから打ち破ることさえ難しくなる。

スコットの言葉を噛みしめ、それからは積極的に海外でトップ選手とコミュニケーションをとるようにした。拙い外国語能力にはお構いなく、トレーニングの話題から天気のことなど、なかなか話がうまく続かなくても笑顔を絶やさずに話しかけていった。するとはるかに格上の選手でもどこか親しみを感じられ、一緒のレースで互角に戦えそうに感じるし、万里の波濤を越えて訪れたような異国の地にあっても、どこかそこがホームグラウンドのように感じられ、日本で闘うのと変わらない精神状態で臨むことができるようになった。

2009年の世界3位となった160キロメートルのレースではフランスの選手と意気投合した。序盤は会話を交わしてリラックスし、レース最終局面では2位の座をその彼と競うことになった。結局、最後は打ち負かされたがレース後に互いの健闘をたたえあい抱擁し、いまなおずっと家族ぐるみで付き合う良き友人となっている。

世界に羽ばたこうとする若いアスリートたちにはぜひとも自身の意識の殻を破り、積極的に海外選手とコミュニケーションをとってほしい。競技面で有益というだけでなくアスリートとしての人生を終えた後にも、生涯にわたって素晴らしい財産を残すことができる。

(プロトレイルランナー 鏑木毅)

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