2018年9月23日(日)

肌落ちの予兆を見逃さない、画像認識で切り羽監視

科学&新技術
BP速報
2018/2/19 20:00
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日経クロステック

 大林組と岡山大学は共同で、ビデオカメラで撮影した切り羽の映像を解析し、肌落ち(崩落)の予兆をリアルタイムに検知する「ロックフォールファインダー」を開発した。作業員が切り羽に近づく鋼製支保工の建て込み時と、切り羽への装薬時に適用し、山岳トンネル工事の安全性向上に役立てる。

肌落ちの予兆を検知する様子(出所:大林組)

肌落ちの予兆を検知する様子(出所:大林組)

 肌落ちの直前に生じるわずかなひび割れや小さな落石を、「背景差分法」と呼ぶ画像認識技術を用いて検出する。具体的には、切り羽の映像を0.1秒ごとに比較し、同一画素の色の変化から移動した物体を捉える。

 発生したひび割れのほか、直径10mm程度の細かい落石についても、石が動き始めてから0.5秒以内に検知できる。重機や作業員の動き、カメラの振動などは自動的に除外する。予兆を検知したら、音や光で作業員に警告し、退避を促す。

 開発を担当した大林組技術研究所地盤技術研究部の藤岡大輔主任は、次のように話す。「当初はレーザースキャナーで計測した切り羽の3次元形状を比較し、変化を検知することも考えた。ただ、計測や解析に数秒はかかる。そこで、計算量が少なく瞬時に解析できる背景差分法を採用した」。

 使用するのは市販のビデオカメラとノートパソコン、警告灯など。トンネルジャンボの運転席の天井やトンネルの天端・側壁に装置一式を設置し、監視領域を設定するだけで、簡単に肌落ちの予兆を検知できる。切り羽の監視責任者が、iPadなどのタブレット端末で遠隔操作することも可能だ。

ロックフォールファインダーの構成(出所:大林組)

ロックフォールファインダーの構成(出所:大林組)

■見落としがない点で、人より優れている

 厚生労働省の「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」では、切り羽災害を防ぐため、監視員が常に変状を監視することを求めている。

 同省によると、2000年から10年までの肌落ちによる被災者は47人。このうち3人が死亡した。肌落ち災害が後を絶たないため、同省は18年1月にガイドラインを改正。大断面トンネルの工事では、切り羽の状態を監視する「切り羽監視責任者」を専任で置くことなどを明確化した。

 ただし、人が目視で予兆を監視するのには限界がある。微小な変化を捉えられないほか、重機などが行き来するために継続して監視するのが難しかった。レーザー距離計を使用する方法もあるが、面的に計測できない弱点がある。目視による監視にロックフォールファインダーを併用すれば、微細な変化を瞬時に検知できるうえ、見落としを防げる。

 大林組の藤岡主任は、「現場への適用が進み、技術が進化すれば、いずれはカメラによる監視だけで対応できるようになるかもしれない」と期待を寄せる。「現場で試行を進め、さらに使い勝手を向上させる。作業に熱中している作業員に、危険箇所を確実に伝える方法についても検討したい」(藤岡主任)

カメラなどの設置状況(出所:大林組)

カメラなどの設置状況(出所:大林組)

(日経 xTECH/日経コンストラクション 木村駿)

[日経 xTECH 2018年2月16日掲載]

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