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小平、コーチとの13年成就 理論体現 滑り変える

18日に行われたスピードスケートの女子500メートルは小平奈緒(31、相沢病院)が36秒94の五輪新記録をマークして金メダルを獲得した。信州大時代から師事してきた結城匡啓コーチ(52、信州大教授)と二人三脚で頂点を目指し10年以上。スピードスケート日本女子初の偉業という最高の形となって成就した。

「このままでは絶対に世界はない」。2005年、信州大に入学した小平に結城コーチはきっぱり伝えた。1998年長野五輪男子500メートル金メダルの清水宏保を指導した理論派コーチが受けた当時の小平の印象は「下手くそ。ただ氷の表面をなめて足を伸ばしているだけで、いわゆるガチャガチャ滑り。ひどい滑りをしていると思った」。

滑りを変える必要性を説くと、小平は「先生、私もそれがしたいんです」と目を輝かせた。高校生の時に信州大の練習を見て「考えることが見えるチーム。私もそこでやりたい」と進路を定めた。だから進学してからは結城コーチの理論を貪欲に吸収していった。

関節の角度や重心の位置、ペース配分といった目指すべき課題を科学的に学び、映像を見ながら技術討論会を実施。互いの感覚のズレを防ぐため、「共通言語」をつくって、学んだ技術を確実に再現できるようにもした。小平は社会人になっても引き続き指導を受けるため、実業団には進まなかった。長野県内で支援してくれる相沢病院がようやく見つかり、卒業後もタッグを組んだ。

理論を体現して10年バンクーバー五輪の団体追い抜きで銀メダルを獲得し、国内敵なしとなったが、世界では結果を残せず、14年ソチ五輪でもメダルには届かなかった。2人の関係に変化が訪れたのはオランダの武者修行。覚悟を決めて1人で海外に行き、2年間自分と向き合ってきたことで、小平が一本立ちするようになった。

「より自分の考えに迷いなく結城先生と接することができるようになった。それまでは自分で決めきれない部分があって、『先生これどうすればいい?』という感じだったけど、今は『こうしたいんです』と意見を言えるようになった」。コミュニケーションがさらに密になり、スケートの考え方が深化した。

オランダから帰国した一昨年の春、平昌まで2人で「22カ月計画」をつくり上げた。結城コーチによる綿密な練習計画、最新の科学知見に加え、小平の要望も受け入れ、練習量が少なかったオランダを教訓に男子並みの高強度のトレーニングも行った。そこから500メートルの連勝街道が始まり、平昌で「25」に伸びた。

スケート人生で最大の選択は何だったかと問われた小平はこう答えている。「将来、結城コーチに教わることができたらいいなと、ずっと憧れてきた。合格しないと信州大に入れないので、入試のときが人生最大に緊張した日だと思う」。結城コーチとの出会いがなければ、金メダリストは誕生しなかった。

(金子英介)

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