絶対エース、圧巻の金 小平「すべて報われた」
【平昌=桜田優樹】日本選手団主将、小平奈緒選手(31)がつかんだ今大会2つ目のメダルは念願の金色だった。スピードスケート女子500メートルでは今季ワールドカップ(W杯)負けなしの絶対エース。五輪記録を更新する圧倒的な速さで重責を果たし、大きく両腕を突き上げた。

「すべて報われた」。会場を覆う興奮がさめやらぬ中、いつもは冷静な小平選手が歓喜の表情を隠さなかった。その目に涙がにじむ。
スタート直後から独特の低い姿勢のフォームを維持。力強い動きで氷を蹴り進む。ゴール後に「36秒94」の数字を確認すると、大きくガッツポーズ。ほっとしたように一息ついた。
「最初から集中して、本当に自分の持ち味を出し切れたレースだった」。日の丸を背負ったウイニングランではライバルの韓国、李相花(イ・サンファ)選手と奮闘をたたえ合った。試合後のセレモニーではジャンプして喜びを表現。少しはにかんだような奈緒スマイルを輝かせた。
小平選手の地元、長野県茅野市はスケートが盛んな地域。トリノ、バンクーバー五輪に出場した吉井小百合さんも同市出身だ。小学校にはスケートクラブがあり、子供たちは小さい頃から氷に親しむ。そんな地域で小平選手は幼い頃から名の知られた存在だった。
「勉強もでき、スケートに真摯に向き合っている姿が印象的だった。まさに文武両道」。息子が小平選手と中学の同級生で、今も交流がある勅使河原はすみさん(59)は振り返る。「当時から奈緒ちゃんきっと五輪に行くね、と期待されていた」
初出場のバンクーバー大会と前回ソチ大会は、いずれも個人種目は5位が最高。ソチ大会では「ベストを尽くせた」と話しながらも、「やっぱり結果を引き寄せられる選手でありたい」と目に涙をにじませた。スケート王国のオランダに拠点を移し、滑走フォームを抜本的に見直した。
セレモニー後の記者会見で、この時のエピソードを披露した。オランダに行ってすぐ、父の安彦さん(62)からメールが届いた。「奈緒の人生は神様がくれた時間だから悔いのないように思う存分使え」。こうつづられていた。
「私の生き方を本当に支えてくれる言葉になった。それが今につながっていると思う」。会見では時折声を詰まらせながら、両親や周囲への感謝を何度も言葉にした。