核戦略が再び主題に ミュンヘン安保会議、米ロ応酬

2018/2/18 23:00
保存
共有
印刷
その他

【ミュンヘン=古川英治】ドイツ南部で18日まで開かれたミュンヘン安全保障会議で核戦略が主題に浮上した。北朝鮮の核開発に加え、ロシアの抑止を念頭に、米国が核兵器を重視する方向に転換。ロシアによる米大統領選への介入を巡る対立も相まって、東西冷戦の終結以来、「核抑止」や「核使用のハードル」といった言葉が安全保障の表舞台を再び覆いつつある。

核の脅威を巡る会議の議論は、北朝鮮問題を背景とした核不拡散体制の揺らぎへの懸念から、核戦略の見直しに広がった。ストルテンベルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長は「北朝鮮はワシントンよりもミュンヘンに近い」と指摘。米欧の結束を訴えると同時に「ロシアや中国、北朝鮮が核兵器を持つ限り、NATOは核同盟であり続ける」と宣言した。

こうした発言には、最大の核保有国である米ロの対立が影を落としている。米国は米ソ冷戦時代の1987年に署名した中距離核戦力(INF)廃棄条約にロシアが違反し、中距離ミサイルの開発・配備を続けていると批判。2日に公表した核戦略の指針「核体制の見直し(NPR)」では、小型核兵器を開発するなど核戦力をてこ入れする方針を明確にした。

「ロシアの政治的な破壊行為はうまくいかない」。17日に会議で講演したマクマスター米大統領補佐官(安全保障担当)は質疑応答でこう発言した。欧米に対してロシアが仕掛けるサイバー攻撃や情報工作には「議論の余地がない」と言い切った。NPRでは通常兵器やサイバー攻撃にも核の反撃を辞さない構えを示しており、ロシアの工作活動も核で抑止する姿勢が透ける。

米大統領選へのロシアの介入疑惑を捜査するモラー特別検察官は16日、秘密工作を行ったとしてロシア人13人を起訴している。マクマスター氏に先立ち講演したロシアのラブロフ外相は「すべてたわごと」と一蹴したが、選挙でのロシアとの共謀を否定して米ロ関係の改善を主張してきたトランプ政権内でも、ロシアへの不満が高まっていることは確かだ。

2017年にノーベル平和賞を受賞した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のフィン事務局長は17日の講演で、「世界は核を使用する方向に動いている」と危機感を表明した。

欧州からも懸念の声があがっている。「新たな核戦略は欧州の利益になるのか」。NPRについて、抑止力を高めて核使用のハードルを高くすると説明したマクマスター氏に対し、会場からはこんな質問が出た。ガブリエル独外相は「欧州を舞台にする武力の論理を望まない」と米国に対する警戒感をあらわにした。

NATOと並行して欧州連合(EU)が独仏主導の軍事協力の枠組みを発足させたこともあり、核戦略で米欧の溝が広がる可能性もある。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]