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羽生の闘志 フィギュア会場を支配

ボン、と曲に合わせて演技を始めてすぐ、羽生結弦は会場の空気を一気に自分のものにした。演技を通して五輪にかける思いが伝わってきた。

体力への不安はあまり感じなかったが、演技後半の4回転トーループをステップアウトしたあたりから足にきていた。最後の3回転ルッツはよく着氷したと思う。

男子フリーで演技する羽生=山本博文撮影

いつものようなギラギラ感はなくとも、静かに心の中で燃えているようだった。ケガからの復帰は想像以上に大変だったのだろう。滑れないまま五輪まで1カ月となったら、並の選手なら諦めかける。そこが羽生の違うところ。ここまで戻したことが、常人の想像の範囲を超えている。

そんな気迫のこもった演技の直後に登場したフェルナンデス。SPに続き、フリーも「いいもの見たな」という素晴らしい演技だったが、羽生のあの気迫の後では弱く見えてしまった。

1本目の4回転サルコーの着氷が微妙で、2本目は2回転になった。これが4回転だったら、全体の印象も変わっただろう。ただ、羽生が後半に4回転ジャンプを2度入れていたので、ミスなく滑っても勝てなかったかもしれない。

この2人に続いて最後に滑り、あれだけの演技をした宇野昌磨には感動した。冒頭の4回転ループの失敗は織り込み済みだっただろう。だから次の4回転フリップを決めると、気持ちが乗っていけた。このまま最後までいけるかな、と思ったら後半の4回転トーループが詰まってしまったのは惜しい。それでも好演技には変わりない。20歳で初めての五輪で銀メダル。自分の同じ年の頃を考えたらすごいと思う。

SP4位の金博洋はフリー上位4人と比べ、スケートが滑らなかった。いつもよりステップも硬かった。SP3位の宇野と僅差だったから、中国男子初のメダルを意識したのだろう。今はまだ技術点で勝負している金博洋には、「失敗できない」というプレッシャーがかかった。

フリー1位になったチェンはSPでメダル圏外となり、吹っ切れていた。朝の公式練習でもジャンプを跳びまくっていた。SPで出遅れたからこそできた演技であり、SPで上位に入ったらここまでできたかどうか。

多くの4回転ジャンプをプログラムに入れる時代になったが、上位3人のジャンプミスは1つだけ。そんなハイレベルな戦いで、日本が金銀を独占する日がこんなに早く来るとは。すごい時代になったと思う。そもそもフィギュアで金銀を独占するのは、ロシア(旧ソ連)以外では非常に珍しいのだ。羽生や宇野は簡単に超えられる存在ではないが、若い選手たちは彼らを目指して頑張ってほしい。

(バンクーバー五輪銅メダリスト 高橋大輔)

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