/

米国で発売、アップルAIスピーカー超辛口レビュー

VentureBeat

VentureBeat

米アップルは2月9日、音声人工知能(AI)で操作する"スマートスピーカー"「ホームポッド」を米国などで発売した。購入を考えている人は自分の耳で確かめるためにアップルストアに足を運んだだろう。349ドルを費やせるなら、1台買って好きな部屋で試してみて自分に合うかを判断してもいい。

しかし、このレビューを読めば、アップルストアに行かずに済むかもしれない。端的に言えば、ホームポッドはとっくの昔に生産中止になったアップルのスピーカー「iPodハイファイ」に少し手を加えたようなものだ。アップルのAIアシスタント「Siri(シリ)」を楽しく使えている人なら、そんな自分の生活と相性が合う重低音の小型スピーカーと理解してもいい。低音が強すぎる点やSiriに頼る点が気になるなら、ホームポッドを買わずに、米ソノスの優秀なAIスピーカー「ソノス・ワン」を2台買うべきだ。

アップルの「ホームポッド」(手前)とその先輩「iPodハイファイ」 (C)Jeremy Horwitz/VentureBeat

基本仕様:どの部屋にも置けるWi-Fiスマートスピーカー

ホームポッドの技術仕様のページをみると、アップル初のスマートスピーカーは「どこにでも置けるアップルミュージック(もしくは、アップルの音楽をクラウド上に保存するサービス『iTunes Match』)の再生機器」と考えるのがよさそうだ。高さは7インチ弱(約17センチ)、直径は約6インチ(約14センチ)で、楽曲をストリーミング配信するのがほとんど唯一の存在理由であり、ステレオではなくモノラルで再生する。

他の機能を期待しているなら、がっかりすることになる。充電ドックやオーディオ入力端子は搭載されておらず、近距離無線通信「ブルートゥース」で楽曲を受信できない。現時点では完全にクローズ型のシステムで、音楽配信サービス「スポティファイ」など他の事業者のアプリから直接配信することもできない。いずれ変わるかもしれないが、ホームポッドの機能は今のところ限定的だ。それでも構わないかどうかは、この"スマートスピーカー"に何を求めるかによるだろう。

長所:設定が簡単で比較的使いやすい

ホームポッドの初期設定はほとんど苦労せずにできた。リモコンや電源ボタンがないため、プラグを壁のコンセントに差し込むだけでよく、電池が切れることもない。初期設定ではホームポッドのSiriの音声と利用者のiOS端末は連携していないため、Wi-FiやiTunes、iCloudなどの設定の共有を許可するよう指示される。

すっかりおなじみになったアップルの音楽配信サービス「アップルミュージック」の勧誘が必要かどうかで6段階か7段階になる画面を通り抜けると、iOS端末の画面で簡単な音声コマンドを試すよう指示される。これでホームポッドを使う準備が整う。

ホームポッドは「ヘイ、Siri」という合言葉を聞くと、リクエストを聞いて処理し、答える間、上部の光の輪が回る。Siriを搭載した端末が部屋に何台もある場合には、ホームポッドが代表して応答する。これについては1つだけ問題がある。呼びかけに応じて音声操作端末が一斉に起動してしまうので、取り組んでいた作業が一時中断されてしまうのだ。iOS端末が起動するのを避けるために、ホームポッド搭載のSiriを「ヘイ、ホームポッド」と呼びかけて起動できる方法があれば望ましい。

長所:どの部屋にもなじむデザイン

家じゅうでホームポッドを試してみたところ、どの場所にも置きやすかった。寝室、ダイニング、仕事部屋、ファミリールーム、リビングにも自然に溶け込む。小型で電源コードがかなり長いので、ぴったりのスペースが必ずあり、延長コードを使わなくてもプラグを差せるコンセントも見つかった。見た目という点では、筆者が選んだスペースグレーはどこに置いてもなじんだ。

つまり、ホームポッドの見た目が特に気に入っているというわけではない。家族のみんなも感想を求められると一様に肩をすくめた。アップルのデザイン哲学を考慮すれば、ホームポッドの見た目がニュートラルなのは驚きではない。プラスチック素材を使ったひし形のメッシュが側面に張り巡らされているため、よく似た形の「Mac Pro」に比べると光沢は抑えめで、目立たない。新型スマートフォン(スマホ)「iPhoneX」のような派手な高級感もない。筆者の娘はホームポッドを初めて目にしたとき、アップルはなぜ小型のゴミ箱みたいな製品ばかり作るのかと尋ねてきたが、うまく答えられなかった。

上部は艶やかなプラスチック、底部は光沢を抑えたゴム製で、それぞれカッコよく、実用的な印象を醸し出している。触らずに音声だけで操作すれば、上部にはほこりしかつかない。だが、使い始めて数時間もたてば、上部の3カ所に指紋の跡があることに気付く。これは光る際に、音量を上げたり、下げたり、Siriと楽曲を操作するエリアが浮かび上がる箇所だ。思った以上に端末に触れて曲を操作することも判明した。Siriに何曲も飛ばしてもらうのを待っていられないからだ(注:ある読者が、iOSのミュージックアプリを使って再生を操作できる裏技を教えてくれた)。

ホームポッドの上面にボリュームボタンを表示する。タップすることで再生、一時停止、スキップもできる (C)Jeremy Horwitz/VentureBeat

人によっては気に入るかもしれないが、少しひねったとみられるデザイン判断をしたとみられる箇所もある。ホームポッドはコンセントに差しても、点灯するといった電源が入ったことを示す印が全くない点がそれだ。他の機器では接続されていることを常にまたは任意で知らせるために、小さな音が鳴ったり、点灯したりする。上部でSiriの緑のライトがさっと光るくらいのことがあっても問題ないと思うのだが。

長所:大音量でも音が割れない

アップルの故スティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)がかつてデザインについて「見た目や印象だけではなく、機能そのものだ」と語っていたように、ホームポッドはそもそもスピーカーであり、見た目よりも機能が大事だ。筆者は年を追うごとに、300ドル以上のスピーカーに優れた音質を期待するようになった。349ドルのiPodハイファイはこの基準を満たさなかったが、これは例外中の例外だ。

ホームポッドの音質に関する2大長所は、サイズから想像できないほどの大音量を出せる点と、全ての音量レベルでスピーカードライバーの性能がきちんとコントロールされている点だ。アップルのフィル・シラー氏はホームポッドを発表した際に「家を揺らすほどだ」と述べたが、この表現はかなり的を射ている。

ホームポッドには上向きのウーファー(低音ドライバー)と7つのツイーターが搭載され、高音を輪のように響かせる。部屋の真ん中にコンセントがあり、そこにホームポッドを置いたとしても、どこからでも音楽を楽しめるというコンセプトだ。または、部屋の隅や壁を背にして置いても、マイクと「A8」プロセッサーを使って音を調節するため、どこに置いてもよく聞こえる。

筆者のテストでは、ホームポッドをどこに置いても音はほとんど同じだった。音がよいかどうかはそれぞれの基準次第だが、めったにないほどのきめ細かさや、小型スピーカーにしてはかなり本格的な低音を出せる点、高音域の精度やスピーカーのノイズのなさにおおむね好印象を持った。ホームポッドは完全な静寂が可能で、通常の音量での高周波音や低周波音のキレも良く、音量を最大にしても音質はしっかり保たれている。これは最大音量でのiPodハイファイに匹敵するほどで、サイズの違いを考えれば驚異的だ。

短所:低音が強すぎて中音が弱まる

ホームポッドが99ドル、さらには199ドルのスピーカーであれば、高音と低音は安定しているが、中音は弱いというひずみも受け入れやすかっただろう。だが、筆者は長年にわたり299ドルの優れた一体型スピーカーを数多く試してきたため、この価格には妥協が一切ないことを期待するのに慣れている。本来ならば、高音はツイーター、中音(音声や大半の楽器の基本音を含む250~2000ヘルツ)は中音ドライバー、低音はウーファーが担う。だがホームポッドでは、ツイーターとウーファーが高音から中音、低音まで全てを扱う。このため、テイラー・スウィフトの「シェイク・イット・オフ」など最近のポップスを再生すると、歌声は小さく低音ばかりが響き、残りの楽器はきめ細かさに欠ける羽目に陥る。

オーディオマニアはかつて、曲の高音と低音しか理解しない人に抗議し、ホームポッドのようなウーファーとツイーターだけのスピーカーを「ドンシャリ」とやゆした。だが米ビーツのヘッドホンは、きょう体が十分スタイリッシュで、販売攻勢を仕掛ければ、こうした音質で高価格を設定しても通用することを示した。

中音ドライバーがないのを差し引いても、ホームポッドの低音ドライバーは音量を常に10か11まで上げているように聞こえる。ホームポッドを書斎に置き、なじみの曲を何度もかけてみたところ、重低音が曲を支配して中音をかき消し、最高音域ばかりが耳についた。アップルがホームポッドの小さなきょう体にこれほどパワフルでコントロールされた低音ドライバーを搭載したのは称賛に値するが、スピーカーに関しては特筆すべき成果はこの点しかない。特に音量が小さいときに、低音をもう少し絞る方法があればありがたい。

短所:ステレオサウンドではないのは残念

ホームポッドとiPodハイファイを並べれば、一目で小さなホームポッドにステレオサウンドがない理由が想像できるだろう。機能よりもフォルムを優先するのはアップルの常とう手段だ。どちらも349ドルで発売されたが、この画像を見ればWi-Fi接続と「A8」プロセッサーはさておき、ステレオスピーカーがホームポッドと同じ値段で買えたのは驚きだ。

ステレオサウンドは果たして重要なのか。答えは「イエス」だ。この60年余り、プロが録音したほとんど全ての楽曲の音源はステレオで作成された。アップルは「iTune向けに音源を作成した」楽曲を販売しているほどだ。これは本物のステレオでの音源作成にとどまらず、現代の音源で可能な質の高い音に特に注意を払っている。アップルは「アーティストや音響技師が意図した通りに聞こえる楽曲を提供する」と明言しており、iTunesではこれを果たしている。だが、ホームポッドでは果たせていない。

iTunes(またはCD)で購入した全ての曲は、優れたステレオスピーカーやヘッドホンで聴くと「アーティストが意図した通り」に聞こえるように設計されている。アーティストが従来のステレオのさらに先を行き、「Qサウンド」などの独自の立体的な音響技術で音源を作成する場合もまれにある(マドンナの1990年の大ヒットアルバム「ウルトラ・マドンナ~グレイテスト・ヒッツ」で使われたのが印象深い)。いずれの場合にも、アーティストと音響技師は真ん中の1つの管ではなく、左右に分かれたスピーカーから聴いてもらうよう意図した。

だからこそ、ホームポッドのステレオサウンドに対する「画期的な」取り組みはどうも理解できない。物足りないのだ。米アマゾン・ドット・コムのAIスピーカー「エコー」に似た形を選択したことでアップルが制約を受けているのは確かだ。それでも349ドル相当の部品を使えば、iPodハイファイのような横長のボックスを設け、ホームポッドと同じか似たような音響ドライバーを装備できただろう。だが、アップルは先行する「エコー」を踏襲し、従来のステレオサウンドを実現しにくい筒型を採用した。

アップルによると、ステレオ音響に似せるため、ホームポッドの音楽用プロセッサーが曲を分析し、何を聴いているのかを判断し、個々の楽器をそれぞれのツイーターにあてがうことで臨場感あふれるサウンドステージを作ろうとしている。だが実際には、個々の楽器は聞き取れるが、目の前に仮想ステージが浮かび上がるような音にはなっていない。前述のマドンナのアルバムに収録されている「エクスプレス・ユアセルフ」やエドウィン・コリンズの「ア・ガール・ライク・ユー」の冒頭部分など明らかなステレオ曲では、ステレオミキシングは平面的で、音響技師が意図した左右のチャンネルのデータがきちんと再現されていないように思える。

ホームポッドの発表時には、2台のスピーカーでステレオサウンドを実現する機能が示唆されていた。だがアップルは数週間前からこの点について明言を避け、実際にはステレオ再生ではなく、同じ部屋で同期されたスピーカー2台を使って空間を満たすだけになる可能性をほのめかしている。さらに、複数の部屋のスピーカーを同時に再生する機能の導入は年内に先送りされた。これらをどう立て直すのかを確かめなくてはならない。

短所:Siriは相変わらず

優秀なAIアシスタントは、もはや低価格の"スマートスピーカー"でも最低限の機能だ。だからこそ、アマゾンの「エコー・ドット」は音質はイマイチでもよく売れている。エコー・ドットとホームポッドの価格差は300ドルもあるが、AI対決では今のところアマゾンに軍配が上がるのは間違いない。ハイテク専門のベンチャーキャピタル(VC)、ループ・ベンチャーズのまとめでは、Siriの正答率は52%で、アマゾンのAIアシスタント「アレクサ」(64%)、米グーグルの「グーグルアシスタント」(81%)、米マイクロソフトの「コルタナ」(57%)の後じんを拝していることが明らかになった。Siriは二流のAIアシスタントといっても差し支えなく、ホームポッドの音楽部門ではやや改良されたものの、優秀なライバルたちにはまだ迫っていない。

シリはホームポッドとそれ以外のスピーカーを区別する唯一の機能 (C)Jeremy Horwitz/VentureBeat

とはいえ、ホームポッド版のSiriでは、リクエストを聞いて正しく説明できる確率が上がった。内蔵されている6つのマイクが「遠隔Siri」(アップル)の役割を果たし、適切な大きさの声で話しかければ、部屋の反対側からでも聞き取ってくれる。楽曲の再生中には、10フィート先(約3メートル先)からコマンドを叫んでも正確に聞き取れない場合もあるが、競合製品が想定さえしていないほとんどの状況で、Siriは何を言っているかを理解できる。

しかし、ホームポッド版のSiriは他のプラットフォームと同じ問題に悩まされている。言葉を誤解し、意図の確認に時間を取るのではなく、間違った道をまい進し、機能も非常に限定的だ。他のSiri搭載端末とは異なり、電話やFaceTime(ビデオ通話)を起動できない。ある時点が来ると、ホームポッドに呼びかけて音量を調整したり楽曲を一曲ずつ飛ばしたりするなどの単純な作業も難しくなる。テレビの近くなど離れた場所に置けば必ず失敗した気になる。直接触って操作する手っ取り早さを求めてしまうからだ。

ディスプレーやリモコン入力を備えていない影響は様々な形で現れた。ホームポッドを初期設定した際、Siriがどう対処するかを知るために「アップルミュージック」のないアカウントをあえて選んだ。すると、ホームポッドはどこから引っ張ってきたのか、乱暴な歌詞の曲をかけ始めた。これは筆者のiPhoneから配信されたのか。結局少したって、筆者の「iTunes Match」のライブラリを調べて適当な曲をかけただけだと判明した。

アップルは今のところ、ホームポッドは基本的には独立したスピーカーで、iOS端末やマック、アップルTVとの連動性は低いとしている。いずれはほかの機器との連携が進むだろうが、現時点で連携していないというのには戸惑いを感じる。しかもほとんど全ての機能をSiriに頼らなくてはならないため、ホームポッドは誰もが使いなれている典型的な「低機能スピーカー」よりもさら使い勝手が悪い。

結論

筆者は長年にわたり数千台に上るスピーカーやヘッドホンをテストし、数えきれないほど多くの「全てを変える」という売り文句に耐えてきたため、新たな音響機器が本当に特別なのか、それとも単にメーカーの誇張なのかをかなり早い段階で見極めることができる。一方、アップルの革新的といえる製品の割合はライバル各社よりも断トツに高いのは承知しているため、クパチーノ(アップル本社がある場所)からのこうした売り文句をむげに切り捨てはしない。

だが残念ながら、ホームポッドは自分がみるには失敗作で、革新的という点に関してはかなりの大失敗だと思う。ホームポッドや以前発売されたiPodハイファイの「革新的な」売り文句にもかかわらず、アップルのスピーカーは何も改革しないと思う。ホームポットは単にありきたりのスピーカーで、現時点では"スマート"ではない。やり取りが楽しいとは思わないし、音質も349ドルという希望小売価格に見合っていない。同じ額で全体的な音質が優れ、本物のステレオを備え、様々な外部サービスに対応しているソノス・ワンのスピーカーが2台買える。ホームポッドはソフトウエアの更新程度では搭載していないハード機能を修正できないだろうし、アップルが本物のステレオモードを追加しても、これを実現するには700ドル近くするハード機器が必要になるのは変わらない。

アップルにはスマートスピーカーの領域にとどまり、改良を加えた後続品を投入してもらいたい。同社がオーディオの質に関心を持っているのは明らかだからだ。Siriを改良し、価格に見合うバランスの良い音質を提供すれば、筆者もホームポッドであふれる家にしたくなるだろう。

追記

アップルはホームポッドをオイル・ワックス仕上げの木製品の上に置くとゴム底で白い輪じみができることを確認した。輪じみができるのが気になる人は、そうしたところに置かないことを同社は提案している。

By Jeremy Horwitz

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

すべての記事が読み放題
まずは無料体験(初回1カ月)

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン