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フィギュア羽生 決戦の時 並々ならぬ金への思い

状況はなかなか厳しい。その中で狙った獲物を仕留めるにはどうすべきか――。雌雄を決する五輪に向け、羽生結弦(ANA)は決戦前の武将のようだ。「本当に作戦は大事です」

足首を負傷した11月のNHK杯から約2カ月、氷を離れた。「滑れないからこそできる」と、復帰プランを描いていた。氷上に戻ったのは1月上旬。最初は真上に跳び上がるだけだった。3回転ジャンプ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は1月下旬から、4回転ジャンプは1月末から、跳び始めた。

11日に現地入り。12日の初練習はゆったり滑った。ジャンプは基本の1回転とトリプルアクセルを1本だけ。13日は4回転トーループとサルコーを含む約20本。14日は4本にとどめ、大半の時間をスケーティングに費やした。そしてショートプログラム(SP)前日の15日、初めて4回転ループを挑んだ。この日は約20本のジャンプの8割が4回転。「計画通りです」と、にこやかに笑う。

2014年ソチ五輪で金メダルを獲得してから、五輪での連覇だけを考えてきた。ソチのフリーでは2回転倒、納得からはほど遠い演技だった。平昌ではただ勝つのでなく、絶対的な強さを見せて優勝したい。「彼はまだ自分のすごさを証明したい(と考えている)。だから金メダリストは1年くらい休むのに、歩みを止めない」とトレーシー・ウィルソン・コーチ。

この4年、羽生は鋭い観察眼でフィギュアの潮流を読んで技を増やし、トップに君臨した。

15~16年シーズンは4回転ジャンプの回数をSP、フリーで計5つに増やし、世界最高得点を連発した。このシーズン、金博洋(中国)が4回転ルッツ、宇野昌磨が4回転フリップを成功させると、16~17年は4回転ループに挑戦。ついにモノにし、SP、フリー合計6回の4回転を跳び、3年ぶりの世界王者に輝いた。「ケガのリスクが高いし、跳ばなくても勝てる」と挑戦に反対したブライアン・オーサー・コーチも、「僕が間違っていた」と脱帽した。

昨季終了時点で羽生は「これ(17年世界選手権)以上にレベルが上がることはないと思う。この延長線上で平昌五輪シーズンは来るかな」とみていた。技の質を上げることを重視し、4回転ルッツは楽しみ半分で練習しても、試合に入れることは否定的だった。

しかし昨年9月、宇野が4回転の種類を4つに増やすと、羽生も4回転ルッツを構成に入れた。今季2戦目で初成功し、3戦目直前に4回転ルッツを跳んで負傷した。皮肉なことに五輪が近づくと、男子トップ選手のジャンプの構成は昨年並みに落ち着いた。羽生の当初の読みは正しかった。

13日、負傷後初めて行った記者会見での羽生は、ここ数年見たことがないほど穏やかで柔和だった。核心に触れる問いはかわし、ネガティブになりそうな言葉は避け、明るい空気を出し続ける。

ここまで日本勢に金メダルがないことに話が及ぶと「誰が金メダルをとろうが、僕もとります」。その表情は金メダルへの並々ならぬ思いにあふれていた。

(原真子)

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