トヨタ自動車系グループの労働組合で構成する全トヨタ労働組合連合会は14日、製造系組合が2018年春季労使交渉の要求書を経営側に提出したと発表した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)相当分でトヨタ自動車労働組合の「月3千円」を超えたのは、123組合の7割強にのぼった。交渉で、グループ内の賃金格差や人手不足などの課題が改善するかが焦点だ。
全トヨタ労連は1月、ベアに相当する賃金改善分で「月3千円以上」を求める方針を決めた。集計対象の123組合でみると、「トヨタ超え」の要求は91組合と前年(64組合)を大きく上回った。
グループ内で最も高い要求額は6100円。愛知県豊田市で14日に記者会見した全トヨタ労連の山口健事務局長は、「規模の小さい組合ほどより高いベアを要求する傾向があった」と話した。グループの格差是正に向け、「まだ交渉の入り口の段階だが、(各社の要求を)大いに評価したい」と述べた。
平均のベア要求額は前年比136円増の3391円となった。トヨタ本体のほか、デンソーやアイシン精機など主要組合のベア要求も月3千円だった。月3千円未満の要求をした組合は一つもなかった。
ベアのほか、定期昇給に相当する賃金制度維持分の引き上げも促す。定昇分はトヨタの7300円に対し、グループ123組合の平均では4527円にとどまる。定昇分がトヨタより小さい中小・中堅メーカーの場合、ベアの水準がトヨタと同額のままでは賃金格差が開いてしまうことが課題だ。全トヨタ労連は定昇分引き上げを後押しし、「中期的な視点も持ちながら課題に取り組む」(山口氏)。
ただ交渉の見通しは厳しい。トヨタの18年3月期の連結純利益は前期比31%増の2兆4000億円と過去最高を更新する見込みだが、為替や米国減税など本業外の押し上げ効果が大きい。デンソーなどグループ主要企業は好業績を背景に賃上げに前向きだが、中堅・中小企業にとっては競争力維持に向けて賃金を引き上げづらい側面もある。
17年春はトヨタ超えのベア要求は64組合だったが、回答で実現したのは38組合にとどまった。電動化など自動車産業の先行きに不透明感が漂うなか、格差是正がどこまで進むかは未知数だ。
グループの中小企業を中心に人手不足も深刻化しつつある。「なかなか有効な手立てはないが、企業の魅力を高めて人材流出を防ぐ意味でも、賃上げなどの手を打つ必要がある」(山口氏)
一時金は平均で基準内賃金の5.14カ月分を要求する。昨年の5.09カ月分をわずかに上回る。
トヨタ系の労組は23日までに、販売会社なども含めた全318組合が要求書を提出する見通し。今後は経営側と週1回程度の交渉を経て3月中下旬の妥結を目指す。(高橋そら)