コインチェック、顧客補償や売買再開なお未定
日本円401億円は出金
巨額の仮想通貨が外部流出した仮想通貨交換会社コインチェック(東京・渋谷)は13日、金融庁に内部管理体制の強化などを盛り込んだ改善報告書を提出した。大塚雄介取締役は同日夜、記者団に「401億円の日本円の出金手続きを終えた」と語った。流出した仮想通貨をいつ補償するか、他の仮想通貨の売買再開の時期などは具体的に言及しなかった。金融庁は内容を精査し、追加の行政処分も検討する。

コインチェックは大規模流出の後、顧客から預かった資産を凍結していた。13日から日本円の出金を再開し、14日以降も出金を続ける。
金融庁への報告書は(1)流出の事実関係と原因究明(2)顧客への適切な対応(3)システムと経営管理の強化と責任の明確化(4)再発防止策の策定――などになる。報告書の具体的な内容については明言を避けた。
流出した仮想通貨「NEM(ネム)」の補償について大塚取締役は「自己資金で手当てはできている」と語った。ビットコインなど他の仮想通貨の送金や売買は「外部のセキュリティー会社と安全を確認したら再開する」と話した。ただ、いずれも具体的な時期のめどは示しておらず、顧客資産の保護への対策はまだ固まっていない。
事業再開が見通せない状況はしばらく続きそうだ。大塚氏は「継続して事業をしていきたい」として仮想通貨交換業からの自主的な撤退を否定した。他社との資本提携の可能性は「検討している」と述べるにとどめた。
同社からネムの流出が発覚したのは1月26日。金融庁は29日に改正資金決済法に基づく業務改善命令を出し、2月13日までに回答するよう指示。2月2日に立ち入り検査し、財務やシステム管理などの実態把握を急いでいる。
金融庁は報告書と立ち入り検査の状況をふまえ必要なら2度目の行政処分に踏み切ることも検討する。特に「顧客と自社の資産の分別管理」ができていたかを重視。分別管理は改正資金決済法で全ての事業者に義務付けており、安全性を担保する根幹ともいえる。企業統治体制の不備に対しても厳しい対応で改善を求める考えだ。
金融庁は17年4月施行の改正資金決済法で、仮想通貨交換会社に世界で初めて登録制を導入した。自社と顧客の資産を分別管理するほか取引時の本人確認、適切な情報提供などを義務付けて利用者保護の網を整えた。
登録業者は現在16社。法施行前から運営しており、登録申請中の「みなし業者」は16社ある。コインチェックはみなし業者の一つだが、流出問題でずさんな経営管理の実態が明らかになった。
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【ジュネーブ=細川倫太郎】イタリアの仮想通貨交換会社「ビットグレイル」から「Nano(ナノ)」と呼ばれる仮想通貨が流出したことが13日までに分かった。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると流出した金額は1億7千万ドル(約184億円)程度。ビットグレイルは「内部調査で不正取引が明らかになった」としている。詳細な経緯は分かっていないが、経営者とみられる人物はツイッターに「資金は盗まれている。顧客に返金することはできない」と投稿した。
すべての引き出しと預け入れを一時的に中止したとし、現在、警察が調査しているもようだ。ビットグレイルは8つの仮想通貨を取り扱い、ナノは取引金額で最も大きかった。