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カカとロナウジーニョ、2人の現役引退に思う

サッカージャーナリスト 沢田啓明

サッカーのブラジル代表で、またクラブチームでも世界の頂点を極めた2人のスーパースターが、2017年12月から18年1月にかけて引退を発表した。カカ(35)とロナウジーニョ(37)だ。ともに00年代から10年代前半にかけて欧州ビッグクラブでMFとして活躍、最優秀選手賞「バロンドール」に選ばれたことがある。こうした経歴だけを見れば2人に類似点があるが、生い立ちやプレースタイル、考え方などは実に対照的だった。

カカ(左)はスピードとインテリジェンスが武器の選手だった

カカは父親がエンジニア、母親が教師という中流家庭に生まれた。ブラジルのサッカー選手の大半は貧困家庭の出身で、彼のようなケースは珍しい。7歳のときサンパウロFCでソシオ(一般会員)としてサッカー教室に入り、才能を見込まれてプロ選手を目指す下部組織へ移った。しかし、本人は「当時、自分としてはプロを目指していたわけではないし、なれるとも思っていなかった。ただボールを蹴るのが好きだっただけ」という。

控えでも腐らず、真剣に練習

ブラジルのビッグクラブの下部組織には、全土から優秀な子供が集まって切磋琢磨(せっさたくま)する。当時のコーチは「センスのよさは感じたが、体力がなく、どのカテゴリーでもずっと控えだった。それでも決してくさらず、いつも真剣に練習に取り組んでいた」と語る。

18歳のとき、プールで遊んでいて頭をコンクリートにぶつけて脊髄を損傷。選手生命を脅かす大けがで、本人が医者に「僕はまたサッカーができるでしょうか」と聞いたら、「歩けるだけでも幸運だと思いなさい」という答えが返ってきたという。しかし、2カ月余り静養してから練習に復帰し、01年にトップチームに加わる。シーズン前の前哨戦に出場して活躍し、ほどなくレギュラーとなった。将来性を見込まれて02年ワールドカップ(W杯)の登録メンバーに入り、優勝を経験した。

03年、イタリアの名門ACミランへ移籍。爆発的なスピードを生かした高速ドリブルと強烈なミドルシュートでアピールし、すぐにポジションを勝ち取った。06~07年シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(CL)で10得点をあげて得点王に輝き、欧州CL制覇に貢献。07年の最優秀選手賞に選ばれた。

しかし、09年にレアル・マドリード(スペイン)へ移籍してからはプレースタイルの違いもあって持ち味を十分発揮できず、出場機会が減少。13年にACミランへ復帰したが往年の輝きはなく、14年からオーランドシティー(米国)でプレーしていた。昨年10月に退団し、12月中旬に現役引退を発表した。

スピードとインテリジェンスが武器の選手だった。「将来、ピッチとクラブをつなぐ役割、具体的には強化部長のような仕事をしたい。これから、そのための準備をするつもり」と語る。

一方、ロナウジーニョはブラジル南部ポルトアレグレの貧しい家庭に生まれた。ボールと戯れるのが大好きで、学校のフットサルチームでテクニックを磨く。地元の名門グレミオで活躍する9歳上の兄アシスに憧れ、7歳でその下部組織に入団。「クラブ史上最高の才能」と評判になった。1998年、18歳でトップチームに昇格し、19歳でブラジル代表入り。南米選手権のベネズエラ戦で、マーカーをシャペウ(相手の頭越しにボールを跳ね上げてかわすプレー)でかわして強烈なシュートをたたき込んで話題をさらった。

ロナウジーニョ(左)は派手なプレーで観衆を魅了した

01年、パリ・サンジェルマン(フランス)へ移籍し、02年W杯でブラジルの優勝に貢献。03年にバルセロナ(スペイン)へ移ってから急成長。ノールックパス、股抜き、シャペウなどの派手なプレーで観衆を魅了し、長年低迷していたクラブを取り巻く雰囲気を一変させた。05~06年シーズンに欧州CLで優勝し、04年から2年連続で世界最優秀選手に選ばれた。

しかし、その後は夜遊びなどでコンディションを落とし、08年にバルセロナを退団してACミランへ。11年にブラジルへ帰国してフラメンゴなどでプレーした後、14年からケレタロ(メキシコ)に在籍。15年7月にフルミネンセへ移籍したが、2カ月後に退団してその後は所属クラブがなかった。

全盛期過ぎても人気は抜群

全盛期を過ぎても人気は抜群で、世界各国で行われるサッカー関連のイベントに参加していたが、今年1月中旬、現役引退を発表した。今後については「大好きなサッカーと音楽の分野で仕事をしたい」と語っており、華麗な足技を披露する「サッカー伝道師」としてこれからもファンを楽しませるつもりらしい。

一方のカカは恵まれた家庭に生まれ、飛び抜けた才能こそなかったが努力を重ねて一流選手になった。もう一方のロナウジーニョは貧しい生い立ちで幼少のころからプロを目指し、天才的なボールタッチで世界中の人々にサッカーの面白さ、楽しさを知らしめた。

サッカーの選手寿命は短い。彼らほどの成功者であっても、30代中盤で第二の人生を始めなければならない。現役時代と同様、2人は対照的なセカンドキャリアを送ることが予想される。それぞれのやり方でサッカー界に貢献してもらいたい。

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