2018年8月15日(水)

米の驚くべき経済ギャンブル

The Economist
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2018/2/14 2:30
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The Economist

 ボラティリティー(変動)が戻ってきた。米国株式市場が長らく、大きな急落もなく着実に上昇してきた平穏な時期が、2月第2週に突如終わった。きっかけは、米国の賃金の伸びが加速したことを示す2日発表の統計報告だった。S&P500種株価指数はこの日、若干下げ、翌営業日には急落した。投資家が見込む株式市場の値動きの荒さを反映する変動性指数「VIX」は、月初の14から警戒感を募らせた37へと跳ね上がった。世界各地で人々が神経をすり減らした。

 市場はその後、多少落ち着きを取り戻した。だが、この先まだ、アドレナリンに駆られた売買が待ち受けている。世界経済の活発な成長を受け、投資家の最大の懸念としてインフレが景気停滞に取って代わる移行が進んでいるからだ。そして、この待望の変化は、世界最大の経済大国における驚異的なギャンブルのせいで複雑になる。

 最近成立した減税法のおかげで、米国はすでに成熟している景気拡大に拍車をかけるために、大規模な財政刺激策を加える。政府の借り入れは次の会計年度に1兆ドル(約108兆円)へと倍増し、国内総生産(GDP)比5%に達する見込みだ。そのうえ、ホワイトハウスと米連邦準備理事会(FRB)の双方でこの実験の舵(かじ)を取るチームは、最近の記憶に残る限り、最も経験が浅い。その結果が好況であれ不況であれ、行く手の道のりは荒っぽくなるだろう。

■株式市場で起きている綱引き

 最近の株式市場の乱高下はそれ自体で大した不安材料にならない。米国、欧州、アジアで同時に進む景気加速に押し上げられ、世界経済はなお堅調だ。相場の水準調整が激しかったのは、低いボラティリティーに賭けていた斬新な投資ファンドが不意を突かれたためだ。だが、こうした投資家が慌ててボラティリティーの再来に対応する中でも、社債や為替といったほかの市場での巻き添え被害は限定的だった。相場急落にもかかわらず、米国株は年初の水準に戻っただけだ。

 しかし、このエピソードは行く手に待ち受けているかもしれない事態を示唆している。投資家が中央銀行の支援をあてにできた時期が長年続いた後、異様に緩い金融政策という安全網がゆっくりと取り外されている。

 FRBは15年の暮れ以降、すでに5回利上げしており、来月も追加利上げする方針だ。昨年9月に2.1%を下回っていた米10年物国債の利回りは2.8%まで上昇した。株式市場では今、株価上昇の理由となる企業収益の拡大と、そうした利益の現在価値を落ち込ませ、高い値付けの正当化を難しくする債券利回り上昇との綱引きが繰り広げられている。

 この緊張は、金融政策がより正常な状態へと回帰する流れの必然的な要素だ。必然性がないのは、米国が打って出る財政の賭けの大きさだ。エコノミストらは、企業と裕福な米国人の納税額を引き下げるトランプ米大統領の税制改革が消費と投資を喚起し、今年の成長率を0.3%前後押し上げるとみている。

 また、2月初旬に発表された予算合意が守られれば、米議会は政府支出を拡大する。民主党は保育制度などの対策のための予算増額を確保するだろう。民主、共和両党のタカ派は、防衛費の予算拡大を勝ち取った。一方、トランプ氏はまだメキシコ国境の壁とインフラ整備計画を求めている。

■短期的にはパウエル氏の双肩に

 ワシントンに広がる財政に無頓着なムードは不穏だ。増加する年金・医療費に追加支出を加えると、米国は当面、GDP比5%超の財政赤字を計上することになる。1980年代初めと2008年の深刻な不況を除くと、米国は1945年以降のどの時点よりも盛大に浪費している。

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